明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

270.家紋について

きものQ&A

質問者

 はじめまして。 家紋が入っている着物について伺いたいのですが、母方の祖母から家紋入りの江戸褄を譲り受けたのですが、家紋は、嫁ぎ先の家紋に染め替えたほうが良いのでしょうか?(私は結婚しています)
 
 嫁ぎ先には、染め替えるように言われているのですが、私としては祖母との思い出に、そのままにしておきたいと考えているのですが・・・しきたりなどをご存知でしたら、教えてください。

質問者 2

 こんにちわ この江戸褄のお着物はどのような機会に着用なさりたいとお考えでいらっしゃいますか?
 
 婚家の親族として披露宴などにお召しになる予定であれば、嫁ぎ先の家紋にされるのがよろしいです。

「染め返るように」というアドバイスがあったということは、婚家の習慣では、一族全てが一族の家紋を付ける習慣のお家であると思われます。 中にただ一人、異なる家紋を付けておられると、結構目立ちます。
 
「何か意味があるのか」と聞かれるでしょうし、お姑さんには「嫁の着物くらい用意してやれないのか」といった厭味も飛ぶでしょう。そういった婚家のお立場もお考え下さい。
 
 逆に、ご実家の祝いの席に着用される予定であれば、お祖母様の家紋のままでも構わないと思います。そのお着物を含めて、お祖母様との思いを共有できましょう。 そういった点もお考え下さい。

ゆうきくん

 嫁入り道具、すなわち実家で用意する紋付には実家の紋を入れて嫁ぎ先に持参します。嫁いだ後、嫁ぎ先で仕立てる紋付は嫁ぎ先の紋を入れます。ですから嫁入り道具として用意とした紋付と嫁いで後仕立てた紋は違う紋、ということになります。
 
 女性の紋については必ずしも家紋(定紋)を入れなくても良いことになっています。反対に言えば男性は必ず家紋(定紋)を入れなくてはなりません。何故そうなのかは分りませんが、おそらく昔は男性社会が中心であったことと無関係ではないと思いますが、その是非については論じてもしょうがありません。
 
 嫁ぐ女性の入紋につきましては、上記のようなしきたりが一般的だと思いますが、地方により違うところもあるかもしれません。 
 
 さて、かおりーなさんの江戸褄は母方の祖母、すなわちお母様の実家の紋か、おばあさまの実家の紋が入っていることになります。あるいは家紋(定紋)にこだわらずに桐や蔦、桔梗など女性がよく使う紋が入っているかもしれません。
 
 問題を整理すると次のようになると思います。
1.  江戸褄の紋は実家の家紋ではない
2.  嫁ぎ先に紋を染め変えるように言われている。
3.  自分としては祖母の思い出としてそのままにしておきたい。
 
上記の問題を考えれば、
1.については女性は定紋にこだわりませんので問題はありません。
2.については、最近嫁入り道具の紋付でも嫁ぎ先の紋をつける人もいるようです。
3.は、そういった気持を大切にしていただきたいと私は思っていますし、しきたりという意味では何も問題はありません。
 
 ここで考えなければならないのは、かおりーなさんの気持ちと嫁ぎ先の人達の気持ち、とりわけ一生の伴侶となる人の気持ちでしょう。
 
 嫁ぎ先の紋を入れるようにと言うのもその家のしきたり習慣があっての事かもしれません。しかし、江戸褄を持たせてくれたおばあ様の気持ちも忘れてはなりません。自分の気持ちを素直に先方のお父様なりお母様に相談なされてはいかがでしょうか。「いわゆるしきたり」ではどちらでも問題はありませんので。
 
 日本のしきたりは日本人が長い間培ってきたものです。それは、いかに社会が、人間関係がうまくいくか、と言う事を目的としています。しきたりに振り回されて人間関係が壊れてしまう、と言うのは本当のしきたりとは言えないと思いますので。

質問者

 早速の丁寧なお返事、ありがとうございました。
 
 私の希望することが、しきたり上は問題がないと知って、ほっとしています。 義祖母と義母に率直な気持ちを伝えて、相談してみようと思います。 当方、お着物一年生なので、これからもたくさん質問させていただきたいと思います。本当にありがとうございました。

参照:「続きもの春秋 」
参照:「きもの博物館」
参照:「きもの講座 2. きものの格について」
参照:「きもの春秋 18. きものの格式」
参照:「きものQ&A 6.家紋」

 

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