明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

306.七月の結婚式 

きものQ&A

質問者

 ゆうきさん、はじめまして。
 
 下の質問をHPのスレッドに書いたのですが、本文中に禁止語 句> (?)が含まれているとのことで、送信できませんでした。 お 忙しいところ申し訳ありませんが、客観的なアドバイスを頂け ればと思い、メッセージを送らせて頂きます。よろしくお願 い いたします。
 
 きもの初心者のらびっと(38歳)です。ゆうきさんのサイト は 、とても勉強になります。夏の薄物のきものについて、結婚 式にきものを着るときの心構えについて、これまでにも何度も書 いておられますが、私からもぜひ伺ってみたいことがあり、 質 問にお答えいただければ嬉しいです。
 
 7月中旬に、親友の結婚式が都内のホテルであります。友人 と して式から出席し、披露宴でスピーチも頼まれています。
 
 絽のきものをこの機会に1枚買いたいと思いますが、黒の鮫小紋 か、グリーンの訪問着にするかでかなり迷っています。お茶をは じめたこともあり、鮫小紋の着物は以前から1枚欲しいと思っていました。顔映りもよく、お店の方にもほめられましたし、自分でも気に入りました。唐織の袋帯をすれば格も高くなりますので略礼装として充分かと思いますし、正直なところ、予算的にもぴったりです。
 
ただ、
「お茶会でも着られるから」
「長く便利に着られるか ら 」
という打算(?)が自分のなかにあるのが、気になります 。
 
 お祝いの気持ちを表すことを一番に考えると、鮫小紋よりも 華 やかなグリーンの訪問着を着てあげるほうがいいように思い、迷っています。訪問着も、抑えた色調で派手ではないので、お茶会によっては着られるときもありそうに思います。
 
 ただ、 夏の訪問着はなかなか着るときがない、という意見も目にしま し たので、鮫小紋の倍ちかいお値段の絽の訪問着を買うのがため らわれます。
 
 ちなみに、鮫小紋なら、夏のお通夜や法事にも着られるとお 店 でアドバイスされましたが、自分でまだ着物を着られないこと もあり、あまり現実的ではないとも感じます。
 
 アドバイスを頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします 。

ゆうきくん

 質問コーナーは、旅から旅さんが管理しております。質問を 一部制限しているようで す。質問がございましたらメールをいただけましたら、分る範囲でお答えします。
 
 さて、ご質問の内容は次の様かと思います。
   ・友人の結婚式の為に着る着物に迷っている。黒の鮫小紋か 緑の訪問着。
   ・鮫小紋の方が汎用性があり、また予算の上でもぴったりで ある。
  ・しかし、極親しい友人(式から出席するぐらいの)なので 訪問着を着て行くべきではないか。
 
 まず、訪問着と江戸小紋どちらも礼装の部類に入りますので 、一般的に披露宴に着て行くのに失礼はありません。訪問着の方が格上である事は言 うまでもありません。
 
 らびっとさんの気持ちには、
「本当は訪問着を着て行きたい。しかし、諸条件を考えると 鮫小紋の方が良いのでは ないか。その諸条件の一つに『お茶会でも着られるから』『 長く便利に着られるから』という打算があることが親友に対する自分の気持ちに引 っかかっている」
事があるのでしょう。
 
 そのように悩まれる親友がいらっしゃる事は傍から見て本当にうらやましく思われ ます。その気持ちを大切にすることが一番と思います。

『お茶会でも着られるから』
『長く便利に着られるから』 ・・・これは打算でしょうか。
誰でも着物は大切に着たいと思っています。お悩みを 突き詰めて考えれば、
「高い着物にするか、安い着物(価格が安いだけでなく長い目で見て)にするか」
と言う事になります。
 
 失礼な言い方かもしれませんが、らびっとさんはお金持ちで すか?確かに訪問着の方が格が高く祝福の気持ちを表す着物としては良いでしょう。 十分に余裕があれば訪問着を新調してください。そうでなければ鮫小紋でも十分です 。
 
 失礼しました。あたかもらびっとさんがお金持ちでないかように決めつけてしまったようですが、申し上げたい事は次のようです。
「きものはその人の気持ちを表す。その場に相応しいきものを着なくてはならない。」
のは当然のことです。しかし、気持ちを表すのは着物が全てではありません。
 
 言葉、態度、表情、果ては贈り物など、数え上げればきりがありませんが。着物はその一つにしか過ぎません。

「祝福する気はないけれども、そう思われるのもしゃくだから誰よりも良い着物を着て行く」
といったお金持ちがいたらどうでしょうか。その態度からたちまち見破られてしまうで しょう。
 
 らびっとさんの場合、スピーチもなさるようです。誰にも 負けない心のこもったス ピーチをなさってはいかがでしょうか。
 
 ただ、鮫小紋を着る時には十分に気を使ってください。
「略礼装でありながらこれほど祝福する気持ちを表すことができるんだ」
と。
 
 最後に・・・ここからは私の好みの問題ですので無視していただいて構いません。
 
 まだ、折角お若いのに黒の鮫小紋というのはもったいないよ うに思えます。お通夜や法事も想定してのことかもしれませんが、結婚式ですからも う少し華やかな色物でもよさそうに思えます。(あくまでも私の好みの問題です。)  

質問者

 こんなに早くお返事をいただけるとは思っていなかったので、感激しています。ありがとうございます。 あらためて、的確なアドバイスをなさる方だと感じました。
 
 ゆうきさんに質問した後もネットであちこち調べたり、きものに 詳しい親戚に話を聞いたりしました。きものについての知識はとても大切だということも、その結果よく分かりましたが、知識だけではきものは着られないのだな、と思いはじめていたと ころへ、ご返信を読み、それが確信に変わった気がします。
 
 きものを着ることを通じてどんな心を表したいと考えるか、が本当に大切なことですね。「きもの」は単に身にまとう高価なも の、ではないような気がする、というもやもやしたものに、ゆうきさんが名前をつけてくださったような、すっきりした心持です。
 
 今回の結婚式ではやはり、自分のなかの親友に対するお祝いの心にいちばんしっくりくる色や形のものを選びたいとあらためて強く思っています。お茶でうんぬんは、あくまでもおまけです。
 
 そういう意味では、ゆうきさんが書いてくださったように 、早くきものを決めて、私の最大のおつとめであるスピーチの 原稿にとりかかりたいです。
 
 そんなこんなで、今は、単衣の付け下げにして、帯を夏物にし ようかと思っています。絽のきものはたしかに7月のお式にはきまりごととしては一番かなっていますが、自分だけがちゃんとしていればいいというものでもないのよ、と大叔母に諭され たこともあります。○○ちゃんの結婚式のときにあつらえたお気に入りの付け下げ、があれば嬉しいですし、それなら1年のうち少しでも長く着られるほうがよいかなと思っています。ホテルで着付けをすれば、それほど暑くもないそうですね。
 
 お金持ちかどうか‥、身の程にあった装いをすることは大切だ ということですよね。本当にその通りと思います。「恥ずかし くない」装い、と一口に言っても、その人がなにを恥ずかしいと思うかで全く違う意味になりますね。私の場合、粋なつもりで値段の割には高そうに見えるお得なきものをきてうまくやっ た気でいることが、きっと一番恥ずかしいとわかりました。
 
 ゆうきさんがおっしゃるとおり、そう思えるだけの友達を持てたこと、その友達から同じくらい大事に思ってもらえていること がなによりの幸せ、贅沢ですね。重ね重ね、教えていただいたことに感謝です。
 
 お店は山形にあるのですね。夫が20年近く前、初めて日本に来たときには、酒田市で英語を教えたそうです。いつか山形にいっしょに行きたいと口ぐせのように話しています。そのときには、きっとお店に立ち寄りますね。
 
 ゆうきさんのお店の夏帯、はまぐりの柄でしょうか、ここまで こだわれたら素敵だなと思いながら見せて頂いています。
 
 またわからないことがきっと出てくると思います。そのときに はぜひまた教えてくださいね。よろしくお願いいたします。 時節柄ご自愛くださいませ。

参照:「続続きもの春秋 4. ポリエステルのきもの 」
参照:「きものQ&A 146.友人の結婚式で大柄の小紋」
参照:「きものQ&A 250.友人の結婚式で着た付け下げの帯」

 

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