明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

317.黒留袖の上に羽織る着物について       

きものQ&A

質問者

 今週にも姪の結婚式があり、親族も形式ばらずに訪問着と聞いていたのが、急に黒留袖着用と変更となり慌てています。
 
 自宅近隣の美容院で着付けをして貰うのですが、式場は他府県なので、そこまでの移動手段はJRとなりこの時期、留袖だけで歩く訳にいかず、上着に何を着て良いのか?戸惑っています。
 
 考えられるのは字模様のある無地のコート(道行)が理想か?と思いますが、最近太り気味で、万が一、前合わせが足りない場合は、黒絵羽織又は、字模様の無地一つ紋の羽織でもよろしいでしょうか?
 
 羽織着用の場合、黒留袖にはどちらが最適でしょうか?
 
 又、黒絵羽織には、まだしつけのままで、羽織紐が付いていないのですが、急なことゆえ手持ちの紐は、柄物しか持ち合わせていません。ちなみに黒絵羽織は、おめでたい模様が入っています。教えていただければ幸いです。
 
 お返事お待ちしています。

ゆうきくん

  一般的に着物の上に着用するものとして羽織とコートがあります。この二つには明確な違いがあります。
 
 羽織は人前に出られる上着ですが、コートは人前では脱ぐのが常識です。もちろん、黒留袖には羽織を着用して人前に出ると言うのは現代ではありません。
 
 戦前戦後には縞お召しに黒羽織が女性の正装であったこともありますが、現代では女性の羽織は正装とはみなされていないようです。
 
 さて、ほのぼのさんの場合、黒留袖を着て隣県まで移動されるとの事です。羽織とコートは洋服に例えると、ジャケットとコートと考えてください。この時期長距離を移動されるわけですからコートの方がベターと考えます。
 
 そして、黒留袖というのは式服です。イブニングドレスを着て何も羽織らずに外を歩く人がいないように、黒留袖を露出して長距離移動する場合には裾柄も隠れる長コートが適当だと思います。
 
 長コートがなければ道行コートで良いのではないでしょうか。 どちらの地方か存じませんが、この時期、コートには防寒防雪という実用的な機能が必要になってきます。天候に合わせて雨コートでも良いと思います。

質問者

 ご親切な回答をありがとうございました。
 
 道行コートが入らない(誂えた時から太ってしまったので前が閉まらない?)心配があり、ならば紐で調節できる羽織ならば・・と考えたのですが、羽織はジャッケットとの事、やはり駄目でしたか?
 
 長期予報では当日はお天気も良くなさそうですし、黒留袖の裾模様の汚れ防止、派手さを隠すためにも、長めの雨コートを着させていただくことにしますが・・・はて、前が閉まるでしょうか(笑)
 
 ところで、折角の折ですので、羽織のことについて教えてください。
 
 お返事のところで、現在は羽織は公式な場所では着ないと記入されていましたが、 戦前戦後程の昔ではなく、ここ20年ほど前に、初釜の際、無地一つ紋のお着物の上に、色無地一つ紋の羽織を着て行ったのですが(勿論、お茶室では脱ぎますが)それは良いですよね?
 
 嫁入り荷物として母が折角誂えてくれたものの、羽織は着る機会なく、しつけを切らない前から道行コートに縫い直しを依頼しようとすれば、
「新しいのを買った方が安く付きますよ」
と反対に和装店では勧められる始末。
 
 お洋服に比べ、それ程の流行もなく、身幅出しも可能で合理的な伝統ある和服を大切にしたいと思っていますが、袖も通していない物が無用になるなんて残念でなりません。今後、お羽織着用のスタイルは、ますます廃っていくのでしようか?

ゆうきくん

 女性の羽織姿は良い物です。どうぞ羽織を着てください。
 
 羽織は昔から着られていました。私が子供の頃、昭和三十年代、着物を薦めた時には必ず羽織を合わせて薦めていました。ちょうど着物に帯を合わせて薦めるように、きものと羽織は対になっていました。それがいつの間にか羽織は着られなくなってしまいました。
 
 何が原因なのか私はよく分かりませんが、おそらく着物を着る人口が減る中で、相対的にお茶で着物を着られる方の割合が増えたことと関係があるように思えます。
「お茶席では羽織はきない」
というルールが、
「羽織はいらない」
につながり、
「一般的に羽織は着ない」
となったのかもしれません。しかし、
「羽織りを着てはいけない」
という積極的な理由は見当たりません。

質問者

 ご丁寧な回答を、再度ありがとうございました。
 
 アドバイスいただいた雨コート着用で結婚式に臨みました。当日の朝は曇り模様でしたが夜の帰宅時には雨が降っていましたので、お蔭様で助かりました。
 
 肝心の、
「前が閉まらないのでは?」
という問題も、何とかホックが合いピチピチ乍、形になったのでホッとしました(笑)

「お羽織はジャケット」
とのご説明はとても分かり易く、大変参考になりました。
 
 お着物の「よそ行き」は、下着(長襦袢)から裏地まで全て正絹の素材なので、注意して管理していても染みや変色があり、勿体ないな~と思います。
 
 今回の様な特別なことがない限り、以前のように和服を着る機会もなく、和ダンスを開く事も殆どなくなりました。

 今はマンションに住んでいて、虫干し出来る程のスペースや風通しも期待できないので、乾燥剤や防虫剤に頼るしかないのですが、たまに点検をして、大切に保管し、これからも和装の機会を作りたいと思っています。
 
 しかし、それ以前に誂えた頃の体型に戻らないといけない課題が残ったようです(笑) いろいろとご指導有難うございました。

参照:「きもの春秋 3.「羽織は着ない」への疑問」
参照:「きもの博物館 40. 羽織、コート、絵羽コート」
参照:「きものQ&A 131.黒羽織の紋について」
参照:「きものQ&A 296.黒無地の道行コート」

 

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