全日本きもの研究会 きものQ&A
322.輪奈織
質問者
輪奈織について教えて下さい。
ゆうきくん
輪奈ビロードについてですね。
ビロードについてはご存じでしょう。ビロード生地は洋服にも使われています。その肌ざわりは贅沢感さえ感じられます。そのビロード生地はどのようにして織られるのか誰しも疑問に思うでしょう。輪奈ビロードというのはその一つの織り方です。
織物は経糸と横糸で構成されています。(経糸横糸がはっきりしない編み物と区別されます。)機織機械に経糸を張り、杼などを使って横糸を通して織物ができます。
輪奈ビロードでは横糸を通すとともに鋼線(はりがね)を横に通してゆきます。織上がった生地は鋼線を束ねたようになり大変重く、これが織物かと思えるものです。鋼線には経糸がしっかりと巻きついています。
洋服地のビロードのように仕上げる場合は鋼線に巻き付いた経て糸の上部を切って鋼線を抜いてゆきます。そうすると起毛した生地に仕上がります。輪奈ビロードの場合、経て糸を切らずに鋼線を抜き取ってゆく方法もあります。そうすると布面にループ状の糸が残ります。この風合いを残すこともあります。
きもので輪奈ビロードは主にコート地に使われます。無地で織られる場合と地紋を織り込むものがあります。
無地の場合は全てビロードのように仕上げますが、地紋を織り込む場合、地紋の一部だけを輪のままに残します。そうすると染め上げた時にそこだけ深い色に仕上がり無地とは違った風合いになります。
用途は主に防寒コートとして使われ、長コート(雨コートと同じように)に仕立てられるのが多いようです。北海道や青森など北国ではきものを着る人にとっては必需品だという話も聞いたことがあります。
仕立は難しく熟練の仕立士でないと敬遠されがちです。簡単に仕立てる方法として糊を使う仕立士もいるようです。私の店でも仕立が込んで外注した際、糊を使われたことがありました。糊で付けた上で縫って行くようです。仕立て上がりは同じ様なのですが、仕立替えが困難になります。
輪奈ビロードは防寒コートの素材として重宝なのですが、織る人がいなくなったと聞いています。私の店でも数年前、最後の在庫を売った後問屋さんも持ち込んでいません。すでに織る織屋はなくなったと言う話も聞いています。手に入り難い織物でしょう。
参照:「きものQ&A 9.輪奈織、ビロード織について」
参照:「きものQ&A 88.倭那とは?」
参照:「きものQ&A 98.輪奈コートは」