明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

324.黒留袖について    

きものQ&A

質問者

 はじめまして。 私の無知によりショックを受けておりますので質問させてください。
 
 先日結婚式に参列する際黒留袖を着ました。 前日に着物を出してみたところ、しつけ糸らしきものが付いていましたので 全部取ってしまいました。 実は数年前にも着たことがある着物で、しつけ糸が残っているとは考えにくかったのですが、以前訪問着を着たときにしつけ糸を取り忘れて着ていた事があったので 今回も前回来たときにしつけ糸がついたままだったのかと思い込んでしまったのでした。
 
 ところが当日他の黒留袖を着ている何人かの方を見ると私が取ってしまった糸が皆さんの留袖にはついているではありませんか! 驚いて身内に聞いてみるとこれはしつけ糸ではないとの事で・・・ 今更仕方ないのでそのままの着物で参列しましたが、今後どうしたものかと思いまして・・ 私が取ってしまったのは衿や袖や裾に付いていた白っぽい透明の糸です。
 
 帯をして見えなくなりそうな場所の糸はつけたままです。 この縫っているものに名称はあるのでしょうか。
 
 またやはりこの糸が付いてないとかなり恥ずかしいものでしょうか。 それとも余り差し支えないでしょうか。
 
 今回式場で着付けを頼んだのですが、その人にも他の人にも全く指摘されませんでした。 気づいていても言わなかっただけなのか、皆さんほとんど気にしていないのか??
 
 今後着る予定は当分ありません。 今回洗い張りをお願いしようかと考えておりますが、その際に、もしこの糸を再び縫い付けてもらうにはいくらくらいかかるものでしょうか。
 
 こんな失敗をする人はそうそういないと思いますが、お返事いただければ嬉しく思います。

質問者 2

 ゆうきくんがお忙しそうなので、私が聞いていることを書いてみます。 もし、間違っているようでしたら、ゆうきくん、皆さま、直して下さいましね。
 
 はるはるさんがおとりになられたのは、「ぐし縫い」と呼ばれる飾り縫いだと思います。
「飾りといえども、ぐし縫いもまた、仕付けの一種になる。だから、本来はとってしまうものである。」
とお考えの方もいらっしゃり、また、実際に、おとりになっている方も、いらっしゃるようです。
 
 逆に、
「せっかくつけた飾りをとってしまうなんてとんでも無い。型くずれを防ぐ意味合いもあるんだし、絶対に取ってはいけない。」
とお考えの方もいらっしゃるようです。 考え方ですから、全国的に見ると、どちらが正解とも不正解とも言えないのでは、と、思います。
 
 いつか、どちらか一方だけが、正解、ということになってしまうのかもしれませんし、あるいは既に、地方によっては、どちらか一方だけが正解とされているのかもしれませんが。 はるはるさんがお住まいの地方は、どちらになるのでしょうね。
 
 ぐし縫いのお値段ですが、 頼まれるところによってまちまちですので、頼んでみようかと思われている呉服屋さんなり仕立屋さんなりに直接お聞きになられるのが一番良いと思います。

  多分、ゆうきくんのところでも、お受けになっていると思いますが、ゆうきくん、如何ですか。

ゆうきくん

 そのしつけ糸のような縫いは、雪割小桜さんがおっしゃるように、「ぐし」ではないかと思います。ただ、「ぐし」はしつけと違って非常に細かく緻密に縫ってあります。間隔を短く均一にまっすぐに縫う技は、縫い子さんの技を競っているとさえ思えます。
 
「ぐし」はしつけを取るように簡単に糸を抜くのは難しいように思えます。「ぐし」を抜いたとすれば、たいした根気が必要だったでしょう。
 
「ぐし」を入れる入れない、白糸を使う、目立たない糸を使うなどは地方によって違うようです。黒紋付(喪服)にも「ぐし」を入れるところもあります。山形では白糸は入れないのですが、名古屋にお嫁に行くお客様の為に名古屋の問屋さんに問い合わせたことがありました。名古屋は白糸で「ぐし」を入れるとのことです。
 
 何故「ぐし」を入れるのは分かりませんが、深い意味がありそうです。
 
 その糸が「ぐし」かどうかは周囲の人に聞いてみてください。

質問者

  雪割小桜さん、ゆうきくんさん、ご丁寧にお返事ありがとうございます。 お礼が遅くなり申し訳ありません。
 
 ぐし縫いと言うのですね。まさしくそのぐし縫いを必死に外してしまったようです。
 
 地域によって様々との事、実家にも聞いてみましたが、取っても大丈夫じゃない?もともとしつけ糸なんだし、とのん気な返事でした。
 
 名古屋なのですが(汗) 今は名古屋から離れて住んでいるので取った実物は見せていないのですが・・ どちらにしてもまたぐし縫いをしてもらうには大変な技術が必要なのですね。
 
 今後しばらく着る機会もないですし、とりあえずこのままにしておくことにします。 本当にありがとうございました。

参照:「きもの博物館 48. 黒留袖」

 

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