明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

333.色留袖を裾模様だけの訪問着として着ることはありですか?

きものQ&A

質問者

 ある展示会に行きましたら、わけあり品で、加賀友禅の色留袖が、破格で売っていました。地色は、おちついた薄水色で、裾模様は、赤っぽさが目立ち、梅やら季節の花に、茶壷や九谷焼の鉢のよものが描いてあり、細かく精巧で、古典柄というよりはモダンな感じがしました。
 
 40の私には、柄の色合いが若いかなとも思いました(着物の派手、地味と年代の関係が、私はまだ今ひとつ理解できていません)。 素敵だけど、幾つ位まで着られるんだろう? 子供の卒、入学式や七五三に着る着物が、もう一つあってもいいなとは思っていましたが、身内の結婚式の予定もないし、色留袖はいらないと販売の方に言いましたら、紋は入れず、訪問着仕立てにして、袖や肩に柄のない訪問着として着ればいいと言われました。
 
 はたして、色留袖をそのような着方をするのは、一般的にありなことなのか、傍から見ておかしくないか、裾模様だけの訪問着ってあるのかしら? いろいろ考えて、結局買わなかったのですが、そのことが、気になりましたので、何人かに訊ねてみたのですが、若い人はNOが多く、年配の方ほどおおらかに捉えておいでのようでした。
 
 また、本加賀友禅についても、知識がなかったので、いろいろ調べてみました。それは有名な作家の物のようでした。
 
 惜しかったような気もして、今後の為にも、教えて頂きたくよろしくお願いいたします。

ゆうきくん

 色留袖と訪問着の違いはご存知でしょうが、色留袖は裾にしか柄がなく通常三つ紋を入れた黒留袖に並ぶ第一礼装です。
 
 一方、訪問着は柄の重い軽いはありますが、紋をつける場合もあります。その場合は一つ紋が一般的です。
 
 裾模様だけの訪問着・・・あります。しかし、柄付は色留袖とはまったく違います。衿比翼なしで仕立てても色留袖は色留袖です。振袖の袖を切ってみても訪問着の柄にならないのと同じように考えていただければ分かると思います。
 
 問題は、
「紋を入れなければ訪問着になるのか」
ではなく、
「紋を入れなければ訪問着を着る場で色留袖を着られるか」
と言うことだと思います。
 
「紋を入れずに着る」と言うのは、紋を入れると格が高くなりすぎるので、格を落として訪問着と同じように着るということでしょう。そういった話は、私が京都にいた時分(二十数年前)から聞いている話です。結婚披露宴に紋を入れずに着るというのは聞いたことがあります。
 
 また一方で、最近の披露宴ではホテルが多いので、色留袖では裾模様が隠れて色無地にしか見えないので不便だ、という話もよく聞かれました。
 
 紋を入れずに着て良いのかどうか、私が判断する問題ではありませんが、確かにそのような着方をしている人はいるようです。
 
「若い人はNOが多く、年配の方ほどおおらかに・・・」
についてですが、私は次のように分析します。
 
 若い方はやはり着物に縁遠くなっているので、一生懸命にきものを着ようとしている人の多くは、着物の雑誌や着物着付け教室で仕来りを学んでいるのだと思います。きもの雑誌や着付教室では、いきおいしきたりを二者択一で教えていることが多いようです。「着て良いか悪いか」というように。
 
 そう言った立場からは色留袖に紋を入れずに比翼も付けないのはNGなのでしょう。
 
 一方年配の方は着物を着る場数を踏んでいるので、色々な着方を見て知っているのだと思います。その結果、その答えは「絶対にだめ」という判断からは遠のいているのでしょう。自分がそう言う着方をしていなくても、他人の装いを見て知っている。それは正統ではないかもしれないが非難するには当らない、と言った程度のものでしょうか。
 
 はっきりとした回答でなくて申し訳ありませんが、はっきりとしたしきたりというものは着物にはないと思っていただいたほうが早いかもしれません。しかし、そこには、独りよがりであってはならない、という厳然としたしきたりがあるのですが。

質問者

 早速のお返事ありがとうございました。
 
 色留袖と裾模様だけの訪問着は、全く別物であるとのこと。紋を入れない色留袖を、つまり格下げして、訪問着のように着られるか?ということが、疑問の本質であったこと、ご指摘を受けクリアになりました。
 
 着物を誂えることは、非日常的な買物ですから、思わず肩に力が入ってしまうのですが、しきたりを踏まえた上で、少しおおらかにとらえられるようになると良いのかな、と思います。お蔭様で、釈然としない気持ちに、踏ん切りがつきました。
 
 今私は、着物の美しさの虜です。これからもっと学んでいきたいと思っています。いろいろ教えて頂きたく、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

参照:「きもの春秋 18. きものの格式」
参照:「きもの講座 2. きものの格について」

 

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら