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全日本きもの研究会 きものQ&A

395. 結納代わりの両家顔合わせでの本人の着物

きものQ&A

質問者

 こんにちは。 似たようなテーマや説明は数あれど、
「結納の場合振袖または訪問着」
等と説明が広すぎて参考にならず、迷いに迷っており質問させていただきます。
 
 今秋、結納に代えて両家顔合わせの食事会をすることになりました。場所はホテル内の料亭です。 男性および双方両親はかっちりしたスーツにします。
 
 私(女性、31歳)もスーツ等にするのがバランスがよいのかもしれませんが、母が結納で着ていた振袖を自分の時(結納ではありませんが)にも着たいとかねてより憧れており、男性側も華やかになるからいいのでは、と了解してくれています。
 
 ところが、いざ実物を出してみたら、写真の記憶よりはるかに鮮やかな明るいピンクが中心で私にはいくらなんでも若すぎるように思え、また柄も昭和モダンの雰囲気で、母も私自身も即決できず迷い始めてしまいました。

 他に手持ち(母のもの)であるのは、

1. 訪問着(錆朱)。嫁入り道具として仕立てられたこともあり、色柄がどう見ても既婚者向き。というより母が子どもの七五三などで着ていた記憶があるせいか「お母さん」ぽいイメージがつきまとい、これから花嫁になる人には合わない気がしています。

2. 付け下げ(白)。20代前半で仕立てたためか若々しい印象の花柄で悪くないですが、私が羽織ったのを見た母の感想としては、特に顔周りの色柄が寂しく似合っていない、席に着いて上半身だけになったらなおさら、と言います。体型補正して着付ければ印象は変わるでしょうが、色のせいか骨ばって見えてしまうという難点もあります。この着物も子どもの行事で着ていたこともあります。
 
3. 色無地(一つ紋、ピンク)。これも20代前半で仕立てたものですが、現在見かけない色味の鮮やかなピンクで、まるで長襦袢の色を濃くしたものみたいな違和感があり、却下するつもりです。
 
 それ以外は小紋などさらにカジュアルになってしまうので、却下です。 両家とも着物の格にうるさい者はおらず、ごく内輪のみの集まりですので、あまりに非常識でさえなければ格より似合うかどうかを重視して選んでよいと思うのですが、当人の私だけがくよくよ悩んでいる状態です。
 
 選択肢はあまりなく、年齢やスーツを着る相手方とのバランスより華やかさをとって振袖にするか、多少地味でも小物等を少し工夫して付け下げにするか、程度です。
 
 スーツにすれば、という声もありそちらが現実的かと傾きつつ、普段着物を着る機会などないのでこの時くらいという気持ちも捨てがたいのです。
 
 こちらでしたらどの項目も大変詳しく解説されているので、何かしらヒントをいただけるのではないかと、投稿させていただく次第です。
 
 長くなりましたが、よろしくお願い致します。

ゆうきくん

 状況を確認しますが、本人の結納ですよね。
 
 まず、いくつか文面から感じたことを申し上げます。
 
 振袖に派手物も地味物もありません。十代用の振袖、八十代の振袖というのはありませんから。派手に見えたとすると、地味な色のきものを着ていたということてすか。昔は明るい色の振袖が多かったのですが、最近は沈んだ色のものが多いように思えます。どちらも振袖です。歳にあわせて「着てよい」「着て悪い」はありません。
 
 他に訪問着、付け下げ、色無地があるとのことですが、どれを着ても失礼にはあたらないでしょう。現物を見ないと「派手すぎる」「地味すぎる」と言ったアドバイスはできませんが、着て悪いものはないと思います。

 せっかくですからスーツではなく着物を着てください。相手のご両親も慶ぶと思います。
 
 さて、私の好みも含めて申し上げます。 いやでなければ、振袖を着ることをお勧めいたします。振袖の色柄もお歳も分からずに無責任かもしれませんが、許せる範囲でしたら是非振袖を着てください。
 
 理由は、着物を着る目的を考えてください。結納と言う場は、相手のご両親と(初めてではないにしろ)正式に対面する場です。 振袖の本来の意味を考えれば、未婚の女性が相手のご両親と対面するのにふさわしい着物です。そして、その振袖は、お母様が着ていたとのことです。
 
 相手のご両親はその振袖を見てどのように感じるでしょうか。
「この振袖は、私が着ていたものです」
とのコメントが、両家の会話を和ませるかもしれません。自分の気持ちを娘に伝え、そして嫁がせるという意図を感じてもらえるかもしれません。
 
 きものはただ自分を着飾るだけのものではありません。その場に合った着物というのは、物言わずに着る人の気持ちを表すものです。どの着物がその場にふさわしいのかを考えてみてください。
 
 以上は、ゆうきくんの好みでした。

質問者

 アドバイスありがとうございます。
 
 文面がわかりにくくて申し訳ありません。はい、本人の結納です。
 
 年齢は31歳にもなるので振袖が「許せる範囲」か判断がつかなかったのですが(客観的にはアウトと思いながら、個人的な思い入れを捨てきれず)、温かいご助言を受け、また婚約相手側も着物は見ていないものの、
「せっかくだから華やかなものを着たら」
と勧めてくれることもあり、もし「許せる範囲」でなくても自分たちが主役だし身内だけの場だからいいよね、と振袖にすることになりそうです。

>派手に見えたとすると、地味な色のきものを着ていたということてすか。昔は明るい色の振袖が多かったのですが、最近は沈んだ色のものが多いように思えます。
 
 そのようですね。振袖の持ち主である母からすると、そうした傾向も考えて自分のものは古臭いと感じて尻込みしていたようです。

>「この振袖は、私が着ていたものです」
>とのコメントが、両家の会話を和ませるかもしれません。自分の気持ちを娘に伝え、そして嫁がせるという意図を感じてもらえるかもしれません

 
 加えて、私の両親も改めて娘を送り出す気持ちが高まるかもしれませんね。 あくまで形式ばった結納式ではない「顔合わせ」でなごやかに、という趣旨ではありますが、よいけじめの場にできればよいと思っております。

 ありがとうございました。

参照:「続きもの春秋 5. 振袖について」
参照:「続続きもの春秋 21.中高年の振り袖」

 

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