明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

443.花倉織  

きものQ&A

質問者

 花倉織の着る時期を教えてください。
 
 (花織に絽目のあるもの) 絽目があるために 7,8月とおっしゃる方もおられるし 単衣仕立てにすれば 6789月にいけますとおっしゃる方もおられ、悩んでおります。

ゆうきくん

 特定のきものが何時着られるのか、と言うご質問ですが、お答えに躊躇してしまいます。答えに対して、受け取り方によっては私の答えが一人歩きしてしまわないかという心配があるからです。それを踏まえていただいた上でお答えいたします。
 
 花倉織は一部にスリット状の絽組織が織られている物ですが、分類的には夏物になると思います。(それは決まったことでは無く異論もあるでしょう。) そこで、「夏物は7月8月」という議論が出てくると思います。これをどのように解釈するかになります。
 
 日本は四季がはっきりしており、きもののしきたりも季節感を尊びます。それ故に、季節季節によって着る着物が決められています。袷、単衣、夏物です。 いつどの着物を着ると言うことは後にして、それらのルールはどれほど厳格に守るべき物なのでしょうか。
 

 昔の文献を紐解くと、季節感を厳格に守らねばならないのは儀礼的な場面であったように思えます。武士が人と会う時など、袷の時期には必ず袷の羽織を着たようです。ただし、読み方によっては、「羽織は」と言うことだったようです。つまり、暑ければ長着は単衣を着ていたかもしれません。
 

 うがった見方をすれば、「目に付くところはその季節にあった着物」と言う事だったかもしれません。
 
 翻って、庶民の普段着はどうだったのでしょうか。 5月だろうと6月だろうと寒ければ袷を着たでしょうし、7月でも寒ければ夏物を着なかったでしょう。地域によっても相当に差があったと思います。
 
 南の地方では3月くらいから単衣を着ていたでしょうし、寒い地方では夏でも単衣を着ていたかもしれません。  
 
 普段着においては、洋服であろうと他のどんな衣装であろうとも「寒ければ暖かく」「暑ければ涼しく」という風習で間違いありません。
 
 着物のルールを厳格に定め、それを普段着の範疇まで適用しようというのは不自然です。
 
 花倉織は琉球で織られた物です。暑い地方ですので一年中着られたかもしれません。本土とはかけ離れた自然環境ですので、現在巷で言われている着物のルールとは違った尺度で織られた物と思います。それを薄物か単衣物かと議論することに意味が無いのかもしれません。
 
 結論的に申し上げれば、夏物・単衣ともに着ても良い場合があるでしょう。 「良い場合」というのは、同じ単衣の時期でも暑い日には似合います。少なくても普段着においては、○月だから「着て良い」「着て悪い」の議論ではなく、その着物が季節・天候にマッチするかどうかで判断すべきです。
 
 自分が知っている着物の知識がすべて正しいと思い込んでいる人が多い昨今です。そう言った人達や、着物のルールを画一化しようとしている人達には、着物を着る意味を真剣に考えていただきたいと思っているのですが。

質問者

 とても考えさせられる回答であったと思います。ありがとうございます。
 
 まだまだ着物歴が短く、流されてしまう浮草のようなわたくしです。 チェックチェックチェック・・・ 着物をチェックされていると自意識過剰になる毎日ですが・・・。

 やはりそれが現実。 私はなぜ、着物を着ているのか? なぜ着物を着ようとしたのか? もっと素直になればいいのに、何故か理屈をつけてしまいます・・。反省・・。

 わたしの身体は着物とお友達になっているのに わたしのこの堅い頭が友達になっていないと思います。 また、一杯、質問させてください。 これからもよろしくお願いいたします。

参照:「きもの博物館 29. 人間国宝 宮平初子氏」
参照:「きものQ&A 325.不思議な着物、大島紬で黄八丈? 」

 

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