全日本きもの研究会 きものQ&A
29.塩沢紬について教えてください
質問者
日本刺繍は習い始めて間もないのですが、無地の塩沢紬に刺繍してみたらどうかなと思い立ちました。でも、どうなのでしょう。
刺繍された柔らかものしか見たことがありませんが、しゃっきりした塩沢にはおかしいでしょうか? なにぶん無地なのでちょっと自分なりの工夫がしてみたいのです。塩沢の素材感を大切に・・・とは思っておりますが、無地をいかすのなら、合わせにしてお洒落紋をつけたらどうかな、染で柄を入れられないものかな・・・などと素人が無謀なことを考えております。
飛び小紋仕様にするなどとはもってのほかでしょうか? そもそも縮みやすいとのこと、合わせはおすすめではありませんでしょうか?
?印ばかりで申し訳ありません。習いたての刺繍をしてみたいこの頃であります。
ゆうきくん
無地の塩沢に刺繍を入れたいということですね。
塩沢や刺繍に限らず一般に柄を入れるという事についてまずお話します。
きものに柄を入れる場合二通りがあります。一つは小紋でもう一つは絵羽です。小紋と絵羽の違いについてはご存知だと思いますが、もしも詳しくお知りになりたければ、ゆうきくんのホームページ「きもの春秋、訪問着と付下」をご覧下さい。
小紋の場合は、きもの全体にまんべんなく刺繍を入れることになります。絵羽の場合は絵羽付けに、すなわち前身頃に多く、後ろ身頃に散らし、胸と左右の袖に振り違いに刺繍を入れることになります。刺繍の量からいって小紋の場合大変な手間がかかると思います。絵羽は刺繍の量的には小紋よりもずっと少なくて済みますが、丸巻きに刺繍する場合だと配置の計算が必要となります。
しかしながら絵羽は晴れ着ですので紬にはそぐわないと私は思っています。紬の絵羽については別の機会に議論いたしましょう。
小紋となれば莫大な手間がかかります。そして、つむぎに刺繍というのは少々クドクなるような気も致します。
小紋でもない、付下げでもないように刺繍をしたらいかがでしょう。例えば次のように(添付画像)。ただし私は作家やデザイナーではありませんので添付のデザインは素人の域を出ません、参考までに。
他に考えられるのはおっしゃるような洒落紋ですが、家紋はフォーマルですので合わないように思えます。いわゆる花紋でしたら合わないこともないと思いますが、極力お洒落紋を入れることでしょう。
塩沢については以前このコーナーで取り上げましたので参照してください。
塩沢には紬と御召しがあり、縮むのは御召しの方です。どちらも袷、単衣にしても構いませんが、塩沢に限らず一般に刺繍物は単衣にはあまり用いないようです。裏が露出していると糸が絡みますので。
質問者
ゆうきさま、こんなにたくさん丁寧に本当にありがとうございました。
以前の塩沢についても読ませていただきました。大変よく判りました。
わあ~、嬉しいです。とても参考になります。とにかく刺繍がしたい一心でしたが、やはり紬のカジュアル性を考えるとこのようにあっさりしたものが適しているのですね。是非参考にして考えてみます。
それから単には刺繍は向かない・・・その通りですね、ひっかかりやすいですものね。なるほど、教えていただいて初めて納得いたしました。
以前に紬にピングー(ペンギンのキャラクターです)の洒落紋を入れた書道家さんを雑誌で拝見したことがあります。本当に遊び着としてだと思いますが・・・。
いっそのこと、楽しいオリジナル紋を考え出そうかなと思い始めました。とても楽しみになってきました。
お忙しい中、色々と教えてくださり感謝しております。考えながら文章を打つということは本当にお時間のかかるものだと思います。私がそうですので・・・。
こんなに丁寧に書いてくださって、結城屋さんの方は大丈夫かな(笑)とちょっと心配 しております。どうぞお体にお気をつけて・・・またよろしくお願いいたします。
関連記事
参照:「きもの博物館 49. 本塩沢」
参照:「きものQ&A 4. 塩沢について」
参照:「きものQ&A 191. 本塩沢について教えて下さい」