明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

376.仕立てるのに採寸しなくていいの?  

きものQ&A

質問者

 おはようございます。
 
 昨日、展示会で高価な大島紬を買ったのですが、 採寸を一切してもらえませんでした。
 
 身長が高いので裄を長くして欲しいことは伝えましたが、 あとは、身長も口頭で173センチと言っただけで実測 しませんでしたし、腰周りも測りませんでした。

 身長の割りに痩せているので、裄を基準に仕立てると 着るときに大分余ると思うのですが、こんなものでしょうか?
 
 とても高価な買い物なのに、めんどくさい着付けが必要になるなんて 納得できないのですが・・・

質問者 2

  かおりんさん 私も同じ体験をしたのでメールします。私も先日着物を購入したのですが、
「身長は聞いたし、見た目でわかるので大丈夫。手は長いから裄は巾いっぱい出してあげる」
と言って、採寸してもらえませんでした。
 
 でも、安い買い物ではないし、後で面倒なことになるのはイヤだと思い、翌日またお店へ行きお願いして採寸してもらいました。そして、今日着物が届きました。
 
 着物の着方にもよるのかもしれませんが、私は手首の骨がかくれる長さが欲しかったのですが、2センチほど骨より上の長さしかありませんでした。そこでかおりんさんの後に裄について質問させてもらっているのですが。。。採寸しても納得のいく着物ができるかわかりませんが、採寸したほうが自分も納得しやすいかもしれませんね。

ゆうきくん

 きものの寸法は大変難しいものがあります。 まず第一に洋服と同じには考えないでください。
 
 洋服を仕立てる場合、B,W,Hなど寸法を正確に採寸します。採寸する項目も着物よりもずっと多いのでしょう。洋服ときものの違いは、洋服は立体裁断するのに対してきものは直線裁ちを基本としているところにあります。
 
 きものの寸法で体形に関係するのは「身丈」「裄」「身幅」の三つだけと言ってもいいかと思います。「袖丈」や「袖付け」「くりこし」などは体形にそれ程左右されません。
 
 洋服の場合、体形が全く同じの人には同じサイズで仕立てることになります。 きもので採寸するとすれば「身長」「裄」「身幅(ウエスト)」の三つになります。
 
「身長」は口頭で聞きます。「裄」は計ります。「身幅」はウエストをお聞きする、または採寸することもありますが目視する場合もあります。
 
 洋服に比べるといい加減と思われるかもしれませんが、数値的に必要なのは上記三つです。 しかし、問題はその後です。
 
 きものは洋服と違って、全く同じ体形の人でも寸法が違う場合があります。 「身丈」は身長が同じでも着方によって変わってきます。腰紐を上にする人、下にする人ではおはしょりの長さが違いますので身丈が変わってきます。極端な場合5センチくらいは違うでしょう。
 
「裄」は大問題で、きものの正式な採寸法では腕をまっすぐに水平に伸ばして手首のところまでなのですが、その寸法では短いとおっしゃるお客様が多いのです。(裄丈については「続きもの春秋12 巨大化するきもの」を参照してください。)
 
「身幅」は好みによって、またきものを着なれている人と初心者では変えなくてはならない場合があります。初心者は少々広くしないと聞くずれする心配があるからです。
 
 私が初めてのお客様のきものを仕立てる場合、次のようにいたします。
 
1.指定の寸法があるかどうかを聞く。
 きものを持っていらっしゃる方の場合、お持ちの襦袢と裄、袖丈を合わせなくてはなりません。襦袢を共に仕立てる場合でも既にお持ちのきものと整合性を図る必要があります。
 指定の寸法がある場合でも、それでよいかどうかを確認します。指定の寸法がある場合、裄や袖丈は変えられませんが、
「最近ちょっと太って」
とか
「年をとって身長が縮んできました」
また
「今持っているきものは前が開いてしまうんです」
「もうすこし腰紐を上にしたいんだけど」
と云った言葉を拾って身幅や身丈、衿下、くりこし等を好みの寸法に仕立ます。
 
2.指定の寸法がない場合、または初めてきものを仕立てる場合。
 寸法を任せていただけるかどうか確認したうえで身長をお聞きして裄を計ります。ウエストは目視する場合が多いのですがウエストをお聞きする場合もあります。
「中肉中背ですね」
とお聞きするのが多いのですが、
「いえ、ちょっと太めです」
とか、
「私、割と痩せています」
などの言葉が返ってきたらそれを参考にします。
 
 以上が採寸と云えるものですが、大切なのはその後です。
 
 きものを着た経験や着付け教室に通っているかどうか、お茶をなさっているかどうかなどお茶を飲みながらお客様の情報を聞いて行きます。
 
 最近の着付け教室では腰紐を上にします。昔は「腰紐」の名の通り腰の位置に締めたのですが最近は臍のあたりにするようですので身丈を変えなければなりません。
 
 裄については十分に説明したうえで本人の好みを入れて決めます。
 
 お茶をなさっている方は座ることがおおいので前幅を少々広くとることがあります。若い人ではなおさらです。
 
 きものの寸法は「同じ体形の人は同じ寸法で」とはいかないという難しさがあります。
 
 身長を聞いて体形を見ただけでその人が着れるきものを仕立てる事は可能です。身丈は腰紐の位置で調整できますし、裄は洋服のように手首が隠れるほど長くはありませんので少々長くても短くても見た目におかしくはありません。身幅も極端に広く(狭く)仕立てることはありませんので着れないことはないでしょう。
 
 しかし、それがその人にとって一番着やすい着物かどうかは別問題です。
 
 私も最新の注意をはらって寸法を決めているつもりですが、それでも任せられた寸法で仕立てると
「前幅もう少し広い方が着やすかったわ」
とか、
「着付けの先生に身丈が短いと云われました」
などお叱り?を頂戴することもあります。
 
 きものの寸法はその人その人の着方、好みがあります。自分に合った寸法は自分で創っていくのが一番よいのです。
 
 私は初めてきものを仕立てる方には、寸法について十分に説明したうえで次のように云うことにしています。
「お客様の御寸法を割り出してお仕立いたします。せっかく仕立てたのですから何回でもきものを着てください。そして寸法で御不満があればそれをはっきりと云って下さい。自分に合う寸法は自分でしかわかりません。何度もきものを着るうちに自分の本当の寸法がわかってきますので。」
  
 きものの寸法は洋服のように定量的に決められるものではないのでとても難しいのです。しかし、それが「適当に仕立ててても許される」と云った事と裏腹であることも否めません。
 
 その呉服屋さんがどうなのかはわかりません。体形を見ただけでその人の好みまでわかってしまうほどの呉服屋なのか、適当にやっても許されるからと思っているのか。
 
 寸法に限らずきものはアナログ的なものが多い商品です。信用ある呉服屋をお選びになることが最善です。

質問者 3

 こんにちわ、 初心者の場合は、身幅が狭いと着崩れるというのは、勉強になりました。

 私の場合は逆なのでしょうか、身幅が広い方が着崩れやすいようです。
 
 お店で、着丈(首の背骨から床まで)と裄(手を下げて背骨から手首の下まで)を計っただけで仕立てて貰ったことがありますが、できたものは、長じゅばんからして床を擦り、着物はもうぶかぶかドンドンでした。身丈だけは
「これじゃ、身丈とれません」
という確認の電話がきたので、
「あるきりで良いです」
といって仕立たので、まだマシな状態でした。もし、反物がもっとあったら、どうなっていたか。やはり、きちんと細かい寸法を出して仕立をお願いする方が良いと思います。
 
 私が着物を買う場合は、必ずマイサイズの着物を持参し、それを計ってもらっています。 ここから計られる寸法は、お店の標準サイズとは、裄も丈も4寸程小さいので、
「これ成人式の頃作ったって言いましたよね。それから体型変わっていませんか?」
と必ず言われます。

 年配になってふくよかになられる方は普通にいらっしゃいますので、妥当な質問だとは思いますが、かなりガリ子な私の腰周りが更に10cmも小さかったとしたら、それはもう病人レベルじゃないかと。

 別の件で知ったことには「最近の着物の寸法は、体型補正サイズを基本とする」とのこと。 私はウェストのくびれを埋める位しかしませんが、一度、着付け師さんに着付けてもらったときにはぶあついバスタオルを二枚胸も腰も含めて巻きました。

 この腰周りは、どうみても10cmは余計にあります。 洋服でもミリ単位でサイズを決めるオートクチュールの採寸では、その服を着る際の下着着用で採寸するとのこと。ガードルやウェストニッパー入れるかいれないかでウェストサイズが変わりますし、ブラの形状で胸周りの形も変わります。

 和服の場合はそこまで厳密である必要はありませんが、補正の有無、程度は場合によっては10cmもの差異を生じますので、着物の寸法を決めるには大事な情報だと思います。 以前、ゆうきくんが、
「男の着物は着物を着てもらって、着た様子からその着物の寸法で合わない分を過不足する」
といっていたのを思い出して、そうやって計ってもらったこともありました。女性の場合でも衣紋の抜き加減などでも変わるとかで、その呉服屋さんが言うにも、一番確実な採寸方法だそうです。

 で、身丈は特に何度も計りなおしてました。身長のわりに腑に落ちない程着丈が短いのだそうで。といっても、遊女のように衣紋を抜きまくっているわけでもなければ、ツンツルテンに短く着ているわけでもないのに、肩山から裾までの丈が標準サイズ表と10cmもズレれば、
「何か計り間違いしたのでは」
と思ったそうです。

 私の場合は、身幅系は肩幅以外に袖付け終わりの位置、腰位置、裾位置と細かく指定しています。肩幅9寸から裾幅7寸5分をどこでどう細めるかも、指定しておいた方が仕立の方も迷わなくて済むそうです。

 えり付けは通常直線ですが、胸元をぴったりさせるには体型により1分位のカーブを描くのが良いというのは仕立でも知られていることですが、私のマイサイズではこれが2分5厘というかなり大きいカーブです。この違いで襟が浮いて着崩れやすくなるので、こんなところも私の体型には必要な寸法です。 というわけで、採寸しないとか、
「身長と腰周りだけで仕立てます」
というのは、ちょっと安易過ぎると思います。 つい、最近、反物が気に入って購入した店でも、何も言わなければ「身長と腰周り」だけで、あとは標準寸法表を見て、サイズを書き入れていくのだそうです。
「既存の着物がある場合は、襦袢のサイズと合わせる必要もあるので」
と着物を持参して貰うそうですが、それでも普通はその着物からは、身丈と裄、肩幅、袖幅、袖丈しか計らないそうです。頼んで、抱き幅、裾幅や褄下丈、袖付け(私のは前後で長さが違います)、襟付けまで計ってもらいました。

 本当のぴったりサイズは、やはり寸法指定あってのものです。

参照:「きもの春秋終論 Ⅳ-ⅳ寸法について」
参照:「きもの講座 6. きものの寸法について」
参照:「きものQ&A 2.衿下の寸法と採寸」

 

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