明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

432.着物  

きものQ&A

質問者

 私は着物が一般的な時代にうまれそだったので今でも着物で過ごす事が多いです。今の様に着物が消えかかっているのは残念におもっています。
 
 理由は多々あると思いますが一番良くきくのは着物が時代にあわなくなったとの意見です。その通りかもしれませんがこれが全てかどうか疑問をもっています。下にその理由と思われる事をかいてみます。
 
 元来着物はサイズも自由でそのまま着れば良いようにできています。サイトで目立つのは面倒くさい細かいルールが色々議論されている事です。私や親たちの世代で結婚式など特別の場合以外ではこんな事を一々気にすることはありませんでした。
 
 私もその様なルールは何も知りませんし不必要です。要するに上からひっかけて帯をするだけです。普段着であれば多少着崩れても気にすることはありません。従って厳しい外の世界から家にもどって着物に着替えると途端に緊張がとれて心の安らぎを覚えます。私と同世代から上はこういう習慣が普通でした。
 
 この気安さと心地よさが着物の大きな利点です。殆どの人が着物で過ごしていた明治の古写真をみるともっと自由に着ていた事がわかります。着物の達人ぶって細かいことを言い出されると、こんな面倒な物をだれが着てやるかといいたくなる。これが着物を廃れさせる大きな原因の一つです。
 
 呉服屋も(新品の場合)最低10万円もするような高価なものばかりうりたがる。これでは着物は一般庶民には縁遠くなるのもあたりまえ。本当は今の着物の主力は普段着(寝巻きも含む)の着物であるべきです。
 
 着物は日本人にはまことに心地よく、本来もっともっと普及してしかるべきです。これを妨げているのが高価格と細かいルールにやかましい人たちです。着物は色々理屈を並べる前に実際着てみてその本当の良さを体感するものです。
 
 また普段着であれば、仕立てを簡略化してコストを下げる余地がある。たとえば広幅の生地をつかえば背縫いやおくみなどは省略できる。また一枚の布で身頃と袖が縫い目なしで仕立てる仕方もある。などなど簡略化してコストを下げる工夫が色々できる。更にサイズをS,M.L.LL,LTなどに標準化すれば大量生産も可能で更なるコストダウンにつながる。これも着物が直線裁ちだからできる事です。
 
 普段着や寝巻きの着物を着る人口が増えると言う事は言わば着物予備軍が増える事です。そのなかからより高級なものを求める人々が必ずでてくる。この着物予備軍がなければ着物の良さを体験した人口が減り、今に誰も着物に目を向けなくなる。更にわるい事に着物の体験がない若い人たちの身のこなしが着物に合わなくなってきており、着物は動きにくい不便なものとの先入観が抜けなくなっている。
 
 かく言う私も海外在住のあと全く正座が出来なくなりました。ここで言う着物の予備軍を増やして行く事が着物を衰退から守る第一歩だと考えます。いかがでしょうか?
 
 私のみるところ現在の洋風化一辺倒の傾向は幕末に日本が西洋と接触したときの衝撃が残って、いまだにあらゆる面で西洋が日本よりすぐれているとの思いが無意識に存在しているためだと思われます。確かに明治は全てを西洋一辺倒になり、一定の成果はあったと思う。しかし150年経ったいま改めて考え直す時期でしょう。
 
 元来洋服は長身の白人の為にデザインされています。体形が違う日本人にはどこかに無理があります。そういう時に日本人としてのアイデンティティを保てるのが着物ですし、この伝統が断たれるのは大変残念な事です。
 
 ついでに書き加えますと家の外で着物の普及は望めません。また誤解なきよう申しますと、格の高い着物の普及に努力されて居られる方々の存在を否定するつもりはありません。そういう着物に興味をもつ人々がふえれば結構なことです。
 
 しかし私の見るところ大勢としては着物衰退が止まる気配はない様に思はれます。私の意見は着物に無関心な大多数の層をどうするかと言う問題に宛てたものです。

ゆうきくん

 ご丁重なご意見ありがとうございます。呉服業界への警鐘として受け止めています。
 
 おっしゃること、全てうなずけます。 日本人の衣装としてあった着物が、今はそれを離れてしまっています。衣装には高価なもの、安価なものがあって当然ですが、今は実用品としての着物が廃れてしまっています。
 
 日本人は皆着物を着ていました。今のように着物が高価なものであれば、日本人みなお金持ちであったといえますが、そんなことはありません。貴族から平民、貧乏人までみな着物を着ていました。どうしてこうなってしまったのかと私も考えています。
 
 日本人が着物を着なくなったことが一番の原因ですが、着物が実用品を離れ、付加価値をいくらでもつけられる只の商品になってしまったことがあります。 高付加価値を付けて、あの手この手で販売する業者にとっては、普段着を売るなど眼中にはありません。きものの事をまったく知らない人が言われるままの価格で着物を売る、そして消費者は着物の知識が無いばかりに高価なきものを買わせられているといった現実が益々着物を縁遠いものとしています。
 
 着物は日本人が皆普段に着てきたもの、という意識を持ちたいものです。 貴重なご意見ありがとうございました。

参照:「きもの春秋終論 Ⅵ-12.着物との本当の付き合い方とは」

 

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら