明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

89.染め直し

きものQ&A

質問者

 結城屋さんのページでは色々勉強させて頂いたり楽しませて頂いたりありがとうございます。
 
 購買部の束ね熨斗模様の帯は素敵ですね。ほかのもみんな素敵ですが。 何処の幸せなお嬢さんが締められるのかしらと思います。
 
 今日は染め直しについて教えて下さい。
 
 身内から回ってきた色留袖ですが、柄に差し障りがあって私はこのままでは着られません。生地は良いものなので染め直そうかと思いますが普通色留袖は小紋等には染め直さないものですか?
 
 刺繍はなくて染めだけの裾模様です。地色は中くらいの濃さの青ですが、染めの柄に金が使われています。糸目に金があしらってある感じです。
 
 金の使われているものでも染め直しはできますか?
 
 お忙しい時期にすみません。お返事は急ぎませんので手のすいた時で結構です。 風邪等召されませんように。

ゆうきくん

 後染めの着物の場合、原則的には染め替えは可能です。しかし、物によっては巧く染め替えできないものがあります。
 
 染め替えには、解き→洗い張り、シミ抜き、整理→色抜き→染→仕立と言う工程があります。
 
 古いシミが落ちない場合、濃い色(特に黒)は跡が残ります。箔使いのものも跡が残る場合があると聞いています。
 
 色無地が一番巧く染め替えられますが、その場合でも濃い色に染め替えるのが普通です。ほとんど新品の色無地の場合は色を抜いてほぼ白生地の状態に戻せますが、古かったり柄がある場合は薄い色では跡が響いてしまうのです。
 
 昔は小紋なども頻繁に染め替えされましたが、小紋を染め替える場合は更紗のような跡が響かないような柄に染め替える場合が多かったようです。
 
 さて、箔使いの色留袖との事ですが、私は余りお奨めいたしません。巧く色が抜けないという理由もありますが、次のような経費対効果の面があるからです。
 
 染め替えて仕立てる場合は次のような経費が掛かります。
1. 解き代  2. 洗い張り、シミ抜き、整理代  3. 色抜き、染代  4. 胴裏、八掛(袷の場合)  5. 仕立て代
 
 その色留袖がどんな状態で、何に染め替えようとしているのか分かりませんが、新品同様に仕立て替えることを考えているとしたら4.は新品を使うことになります。5.は当然掛かります。仮に色無地に仕立て替えようとする場合、節約できるのは新品の色無表生地の価格から1.~3.の合計価格を引いた額になります。
 
 染め替えをした場合の1.~5.の合計した金額と新品の色無地を仕立てた場合(表生地+4.+5.)がどの位違うか計算してみてください。(必要でしたら当社でも見積もります)
 
 確かに染め替えた方が安いと思います。しかし、前述したように満足できる染め替えが出来るかどうかは疑問です。まして絵羽物や染価の高い物ですとその差は相対的に小さいものとなります。
 
 そう言う訳で、柄物とくに絵羽物に関しては私の店ではお奨めしていません。
 
 ですから実際に箔使いのきものを染め替えた事がないのではっきりと応えられないところがあります。
 
 染め替えについては、私よりも旅から旅さんのほうが経験が豊富ですので聞いて見ましょう。

旅から旅

 さすらい人さん、こんばんは。 ものを大事になさる気持ちは、ほんとうに尊いと思います。 ありがとうございます。
 
 さて、柄に差し障りのある色留袖を染替えとのことですが、 僕もゆうきくんと同じ意見ですね。
 
 その理由は、ほとんど成功の見込みがないからです。 染めだけの裾模様とのことですが、たぶん、胡粉を使っていると思います。 白を表現している部分は、友禅では胡粉(ごふん)というものを使います。この胡粉、なかなかきれいに抜けないのです。
 
 そして、なんらかの染めを施したとき、その部分は染まらないか、染まっても色が薄くしか染まりません。 実に、厄介なヤツなのです。 ですから、色留袖だけでなく、付下訪問着なども要注意なのですよ。
 
 また、糸目の印金加工(いんきんかこう)なども剥がさなければいけませんね。 そしてそれよりも、気を付けなければいけないのは、撥水加工がしてないかどうか、ですね。もし、加工がしてあると、あきらめられたほうがいいですよ。
 
 もし、柄に差し障りがなく、地色や柄色だけを地味にしたい、ということであれば、 一発勝負のウラ技の染替えってのもありますが、模様は同じままですから、意味がないですね。(このウラ技も、撥水加工がしてある場合は、不可能です)
 
  長々と書きましたが、僕もゆうきくん同様、お勧めできません。 では、またね。(旅)

質問者

 あらためて裾模様とか金加工とは贅沢なものと思いました。
 
 無理はしない方が良いでしょうね。 私もこれから着物を作る時は後々も役に立つような始末のよい物を心掛けるようにいたします。
 
 この色留袖については贈り主に失礼でないような別の生かしかたを考えなければいけませんね。
 
 お忙しい中を素人にもわかるように御説明いただいて恐縮でした。
 
 家業の関係で、
「お宅ならつかいみちがあるでしょ」
と親戚から着物がまわってくることがよくありまして、うまく活用できないものがたまってちょっとこまっています。

 また、折を見て相談にのってください。

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参照:「きもの講座 4. 染と織について」
参照:「続きもの春秋 10. 悉皆について(再考)」
参照:「きもの春秋終論 Ⅵ-6.古い着物はどうしたらよいか (着物のメンテナンス)」
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