全日本きもの研究会 きものQ&A
540.色無地の色
質問者
はじめまして。色無地の色についておたずねです。
若い頃に、白生地から染めてもらった色無地があります。私の好みの色に染めてくれると母が申しましたので、単純に当時成人式でよく見かけた深緑に染めてもらいましたが、染織家の娘である大叔母には、
「こんな濃い色に染めて。もっと明るい色にして、後から色かけるもんや」
と聞き、それ以来着られずにいます。
40代になりましたが、そろそろ着られる色なのかどうか、知りたいです。
40代向けの色とはどんな色でしょうか。緑系、黄色、橙系、紫系でも知りたいです。よろしくお願い申し上げます。
ゆうきくん
白生地を無地染めする場合、最初から濃い色に染める方はいらっしゃいますし、それがNGであると聞いたこともありません。ただし、その大叔母様がおっしゃることも分かります。
染替をする場合には、一旦色を抜いて白生地の状態に戻してから次の色をかけます。長い間着た色無地の場合、汚れやスレ、シミなどがあって完全に白生地に戻らない場合があります。その場合は、薄い色に染めた時、それらが響いてくる場合があります。シミがそのまま見えてしまうと言ったように。
ですから、染替えの場合は濃い色に染めた方が巧く染まります。
また、その大叔母さんは、
「後から色かけるもんや」
とおっしゃっているのは、
「色を抜かずに濃い色をかける」
事を言っておられるのかもしれません。
その場合は、色をかけるたびに色は濃くなりますので「最初は薄い色で」と言う意味かもしれません。
どちらにいたしましても、「染屋さんの立場」では、口について出てもうなずける話です。
ご質問の主旨は、
「その色無地を着ても良いか」
と言う事ですが、
「色が似あう(地味でも派手でもなく)」
のであれば何も構わないと思います。
気を付けるべきは、染織家の娘である大叔母様との人間関係を壊さない事、の一点かと思います。
質問者
早々にお返事をいただき、ありがとうございます。結城屋さまのページ、大変興味深く読ませていただいております。
祖父のやっていた製糸工場で母が少しずつ買い求めた白生地を染めて作ってもらった色無地です。
色無地を染めた時には大叔父は亡くなり、染を継ぐものはおりませんでした。それで大叔母に相談せず、他の叔母づてに染めたようなのですが、尊敬する大叔母の言葉を聞いて、物を知らないというのは恐ろしい、残念なことをした、とこれまで思っておりました。結城屋さまのお言葉に、もやもやしたものが晴れたようです。
私自身は、色白ではなく、どちらかというと目鼻立ちもはっきりしているので濃い色こっくりした色が似合うと感じます。母が作ってくれた着物を、コーディネートはちぐはぐにならないようにしながら自信をもって着ていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
参照:「きもの博物館 37. 白生地」
参照:「きもの講座 4. 染と織について」
参照:「きものQ&A 68.色無地について」