全日本きもの研究会 きものQ&A
529. 紬とお召
質問者
はじめまして。最近ウールや木綿の着物を普段使いし始めた初心者です。ネットで安い古着を買い、自分で裄や身丈を直しながら使っています。
さて、最近「西陣お召織」なる亀甲絣の着物を手に入れました。
以前こちらのホームページ「336.西陣御召」を 拝見して、「西陣御召」」と一言で言ってもなかなか難しいものであるなと感じてます。
いわゆる「お召」は縫い紋を入れて略礼装として使用できる。と認識していますが、この着物はそのような用途の使用に耐えうる物でしょうか?
知人に見せると、
「これ紬でしょ?普通紬には紋は入れないよね。」
と言われ、紬はあくまで普段着であることは聞き及んでいます。とはいえ、紬に縫い紋を施す場合もあるとも聞き、???な状態です。
確かにお召しというと無地なのかな?と思うところもあります。亀甲絣のお召というものが存在するのか分かりませんが、一般的な話として、この着物はどのような性質を持つ物だとお考えであるかお聞かせ願えれば幸いです。
ゆうきくん
「御召」につきましては、「きもの博物館5.御召」を参照してください。
御召か紬かの決定的な違いは生糸を使っているか紬糸を使っているかです。画像では良くわかりませんが、紬糸のようにも見えます。また、御召は「先染め縮緬」とも言われ、縮緬地と同じくシボがあります。本塩澤はその組織上「塩澤御召」と呼んでもさしつかえないようなものですので、絣イコール紬とは限らないと思います。
御召に縫い紋を入れて略礼装にする、と言うのは無地の場合です。絣は礼装にはなりません。この場合、生地が御召であろうが紬であろうが礼装には使用できません。
「西陣御召」という名称ですが、呉服用語は実に曖昧な使い方をします。大島紬は、昔は紬糸を使っていましたが、現在は生糸を使っています。それでも伝統的な「大島紬」としています。
商標であれば、必ずしもその織物の性質を正確に現していないものもあります。
この場合がどうかは分かりませんが、詳しいことが知りたければ現物を呉服屋さんか誰かに見てもらってはいかがでしょうか。
質問者
回答ありがとうございます。
呉服用語が曖昧な使い方をするとのことで、 そこが難しくも、着物の歴史的背景が反映されているようにも思えます。「衣服」を「御召し物」とも言いますが、「西陣御召」という単語にも、
1.西陣御召=西陣で作られた衣服
(この場合の御召は「衣服」という意味での御召)
2.西陣御召=西陣で作られた御召
(この場合の御召が用途的な意味合いでの「御召」)
という、複数の意味合いがあるというかんじでしょうか。
いずれにせよ、正しい知識を得るには、勉強が必要なようです。本来勉強などしなくとも、(洋服のTPOなどのように)日常生活を通して、 自然と常識として身に付くのが理想なのかなとも思いますが、
残念ながら和服に関しては、自ら能動的に動かなければ、TPOや 常識が入手できないのが現状のようです。
こちらのホームページをまた参考にさせていただきながら、着物ライフを楽しみたいと思います。ありがとうございました。
参照:「きものQ&A 336.西陣御召」
参照:「きものQ&A 512.花織と西陣御召について」