全日本きもの研究会 きものQ&A
547. 道行コートの生地
質問者
Q &Aを読ませて頂きました上でお伺いします。
実は道行コートを一枚、新調したいと思っております。着物は普段は着ることが無く、お茶の稽古、お茶会、催し、謡の稽古くらいです。車で行っても駐車場からは歩きます。歳と共にその際、他の人の目線を感じるのが億劫になりました。
近年作った着物は無地物が数枚ですが、渋いグレー、グリーン、黄土色で洋服を着なれている身では面白くありません。何故コート地が少ないのかは理解出来ましたので、着物の反物で合わせを作りたいとおもっています。
その際生地で気を付けることは何でしょうか?羽裏がつくからどんな織でもよいでしょうか?膨れ織、唐織が無難でしょうか。お伺いします。
ゆうきくん
昔は、専用のコート地が作られていました。生地はしっかりしたものが多く、おっしゃるように膨れ織や西陣の織物などがありました。しかし、現在は需要がないのでほとんど作られていないようです。私の店でもコートを誂える場合は、小紋の着尺地や紬地を用いています。
コートに適する生地の条件と言えば、
➀生地がしっかりしている。
➁防水防汚に適している。
と言うところでしょう。
➀については、とりあえず薄っぺらな生地でなければ大丈夫です。
➁は、コートに仕立てる際はガード加工を施します。しかし、次の生地は適さないと思ってください。
羽二重地 汚れに弱く、スレにも弱いです。
御召生地 水に弱く、シミになり易い。
鬼縮緬地 水が付くと縮みやすい。
それ以外の生地と言えば、一越などのシボの低い縮緬地、紬地、膨れ織などの織物と言えます。
文中にあります「唐織」は着物の生地ではありません。能衣装に「着物」として着られますが、舞台衣装と思って下さい。「唐織」は帯地として使われ、一般に着物として織られたものは見たことがありません。あったとしても、浮糸が引っかかってコートにはできないでしょう。
お茶やお稽古で御召になられるとの事です。私の店の生地をいくつか添付いたしました。
- 更紗小紋
2. 江戸小紋
3. 小紋(飛柄)
4. 紬
- 更紗小紋 柄が賑やかでとてもお洒落です。ただしフォーマルよりもカジュアル感があります。生地は丹後の紋意匠縮緬地です。
- 江戸小紋 私の店では江戸小紋のコートは良く仕立てます。これは、いわゆる「柄物」の江戸小紋ですが、鮫小紋や行儀がらの江戸小紋でしたらフォーマル性が増します。生地は変わり無地縮緬です。
- 小紋 飛び柄の小紋です。フォーマル性も高くおしゃれども抜群です。生地は丹後の一越縮緬です。
- 紬 米沢の紅花紬です。紬地は縮緬に比べて、防水防汚に適していますので、着物を良く着る方には重宝してもらっています。ただし、フォーマル性に劣ります。お茶の稽古に着て行くのは構わないと思いますが、稽古事の場合、師匠の意見が優先しますので、師匠によっては紬のコートはご法度の場合もあるかもしれません。
他にもありますが、興味があればお問い合わせください。
コートの生地については大体この様かと思います。また、分からない事がございましたらお問い合わせください。
質問者
結城屋様
早速のご返答ありがとうございます。
近年仕立てた袷の着物は鮫小紋、鮫小紋の訪問着、白生地から好みの色に染めて頂いた付け下げ柄の色無地一つ紋、と≪お茶が出来そうな人≫には化けれますが、無難な着物で、コートで楽しもうかと思っていました。
紬にも羽織れる御召も良いかな?(近年のお茶会で若宗匠が御召を着てられました)金彩が入ったのも良いかななんて考えてましたが、有難うございます。
顧客でもありませんのに分かり易く教えて頂きました。(呉服屋さんに伺うと何も買わずに帰るのは気が引けます。)御召、先染めの唐織は取り敢えず止めておきます。10月頃には出来上がるよう、これからゆっくり探します。この度は有難うございました。
参照:「きものQ&A 172. 着物地でコートを作ったんですが・・・」
参照:「きものQ&A 122. コートについて教えてください」