全日本きもの研究会 きものQ&A
35.夏物の長襦袢について教えてください
質問者
夏の薄物の長襦袢についてです。
単に着る白い絽の襦袢を持っていますが、これは夏大島や絽の着物に着てもいいのでしょうか。
それから、絽の訪問着などと薄物の紬では長襦袢も違うのでしょうか。
麻で出来たものもあると聞きますが、このようなものはどんなお着物にあわせるのでしょうか?
今年の夏は薄物に挑戦してみたいのです。どうぞお教えください。
ゆうきくん
夏物の襦袢は絽や紗を用います。
絽の襦袢であれば夏物に着てください。紗よりも絽の方が格が上になると思いますが、どちらを着ても構いません。絽は肌に付く感じがしますので、私の店では紋紗の襦袢をお勧めしております。(添付画像参照)
紋紗はさらさらしていますので夏向きです。
麻の襦袢は夏物には最適です。夏のきものの一番の問題は汗対策です。まして肌に近い襦袢では尚更のこと。直接肌に触れなくとも汗が浸透してしまいます。夏でもよくきものを着るお客様には麻襦袢をお奨めしています。
背縫いをミシン縫いにしておけば洗濯機で洗うことも可能です。私の母は毎日きものを着ていますので、二着の麻襦袢を毎日取り替え引き換え着ています。洗濯機で洗って干せば一晩で乾いてしまいますので、まめにすれば1枚でも毎日着ることが出来ます。
麻はシワになると言いますが、干す時にきちんと伸ばせばシワはなくなります。正絹の襦袢を着て、いちいち染み抜きに出すことを考えればとても便利な夏襦袢です。夏大島や夏の普段着にはぴったりです。麻素材ですので、格から言えば普段着ですが、お茶の先生をしているお客様の中で麻襦袢に正絹の半襟を付けて着ている方もおります。
毎日のように、ひと夏に何度も付け下げや色無地、小紋を着る人にとっては生活の知恵かもしれません。夏のきものに挑戦したいのでしたら、是非麻襦袢をお奨めします。
麻襦袢は価格も安く、紋織りで二万円、絽で二万五千円程度です。よろしかったらお仕立てしますよ。
質問者
ゆうきさま、たくさんご説明いただき、どうもありがとうございました。
紋紗というのは初めて知りました。 麻と絹の紋紗があるという事なのですね。お写真を見るとさらさらして気持ち良さそうでした。ありがとうございます。
それから、お洗濯のためには手縫いではなく、ミシン縫いにするというのが夏物の襦袢の決め手なんですね。
海島綿という言葉も耳にするのですが、これも夏襦袢の素材でしょうか?
綿ということなので麻の紋紗襦袢と同じカジュアルな扱いのものでしょうか?
またまた質問になってしまいました。お時間のあるときにまた教えてください。
ゆうきくん
洗濯機で洗濯できるのはあくまでも麻襦袢です。正絹は洗濯できませんので・・・。
海島綿はカリブ海の西インド諸島で産する長繊維の高級綿です。
他にもエジプト綿など最高級と称する綿がありますが、どれが世界一なのかは分かりません。どちらにしても海島綿は高級綿です。
海島綿の襦袢が出回っていることは知っています。私の店にも何社かの問屋さんが持ち込んだことがあります。しかし、実際に扱ったことが無いので着心地その他については分かりません。綿の襦袢と言えば滑りが悪く着にくいように思えますが、高級綿の海島綿ですから着にくくはないのでしょう。
綿の襦袢は格からいえば正絹よりは下になると思います。しかし、前回お答えしたように、夏襦袢の問題は汗対策です。襦袢は外から見えるものではありませんので、メンテナンスの上でメリットがあるのであれば着て差し支えないと思います。
扱ったことが無いので決定的なことが言えませんが、もし呉服屋さんで薦められたら着心地やメンテナンスについて説明してもらえば良いでしょう。
質問者
『麻の襦袢は夏物には最適です。夏のきものの一番の問題は汗対策です。まして肌に近い襦袢では尚更のこと。直接肌に触れなくとも汗が浸透してしまいます。夏でもよくきものを着るお客様には麻襦袢をお奨めしています。背縫いをミシン縫いにしておけば洗濯機で洗うことも可能です。』
この部分に関して質問なのですが、何故「ミシン縫い」だと洗濯機OKで、手縫いだと いけないのでしょうか?
よくわからなかったもので... ちなみに、まだ袖を通していませんが麻襦袢を1枚持っています。これは手縫いなのか ミシン縫いなのかわかりませんので、洗濯機OKかどうか判断が...
横から割り込んですみませんが、お手隙のときにでもお答えいただければと思います。
ゆうきくん
ミシン縫いと手縫いの違いはその緻密さにあります。ミシン縫いは非常に緻密で、解くのが難しいほどです。しっかりとした手縫いも洗えないことはありませんが、洗濯機でガラガラとするには不安が残ります。(実際に実験したわけではありませんから、どのくらいどうなのかははっきりとは答えられませんが)
要するにミシン縫いの方が安心して洗濯機に入れられるといったほうが良いかもしれません。ミシン縫いと手縫いを見比べていただければ分かると思います。既製の浴衣はミシン縫いで仕立てられています。
実はミシン縫いと手縫いの違いを添付しようとデジカメで試していたのですが、余りに細かいので巧く映らず時間がたってしまいました。 ゴメンナサイ
質問者
お忙しいところご丁寧にご回答いただきましてどうもありがとうございました!
機械でしっかり縫ってある方が安心して洗濯機でも洗える という意味だったのですね。 うちにある麻襦袢は手縫いかミシン縫いかわかりませんので 今年の夏に洗濯ネットに入れて手洗いコースで洗ってみようかなと思います。
質問者 2
お節介で申し訳しわけないと思ったのですが、経験を申させていただけますか。
我が尊敬するゆうきくんさまのおっしゃる通り、夏の襦袢は麻に限ると思います。 呂は自分の経験では、暑い、張り付いたような感じ、一度汗になったらアウト、洗い張り、仕立て直し...です。
麻と化繊の混紡を洗濯が簡単だという呉服屋さんから薦められて買った事が有りますが、暑くてたまらなくて..... 麻と木綿の混紡も、結構暑くて.....さらしの半襦袢に衿を付けて、袖を呂とか、麻とか付けたりいろいろしましたが、結局、麻の長襦袢になりました。
私のは手縫いなのですが、脱いですぐに、簡単に袖だたみにして、洗濯ネットに入れて、他の洗濯物と一緒でも、また単独でも、洗濯機に入れて洗います。
洗い終わったらすぐに(ここが肝心)、手アイロン(昔の人は良く言いましたが)でしわをのばし、たたいて形を整えて干します。 夏ならすぐに乾きます。
めんどうな事は苦手ですから、なるべく手抜きで、気軽に夏でも着物が着られるように、後の始末が楽なように...と、一番簡単で、清潔...です。
専門の方とか、毎日のように着物の方は、きっとそれぞれの工夫をなされてお過ごしと思いますが、私は夏は麻の長襦袢が2枚あれば最高...です。 袖から入ってくる風の爽やかな事、女物は袂が開いていてしあわせでした。
おせっかいでごめんなさい。
質問者
有難うございます。 ミシン縫いの麻襦袢は洗濯機でもガラガラと・・・、と書きましたが、皆さんの話を聞くうちに次のようなことに気がつかされました。
私の母は夏でも毎日きもので麻襦袢に重宝しています。もちろん毎日洗濯機で洗います。それが一番便利なことは間違いないのですが、考えてみれば私は自分で洗濯をしたことがありません。
母の話を受け売りで言っているだけかもしれません。具体的なことを質問されると己の経験不足が良く分かります。現場のことはやはり現場の人が良くわかります。これからも現場の経験を聞かせていただきたいと思います。
お互いに良い情報を交換する場にしたいと思っています。
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参照:「きもの春秋終論 Ⅵ-36.単衣の着物は何時から着るべきか」
参照:「きもの博物館 61. 平織麻襦袢(ひらおりあさじゅばん)」
参照:「きもの講座 3. 夏のきものとゆかた」
参照:「きものQ&A 284. 本麻の長襦袢について」