明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きものQ&A

42.袋名古屋という帯の仕立て方

きものQ&A

質問者

 元禄袖の件、ありがとうございました。またまた質問なのですが。 今度は「袋名古屋」です。

 どうもうちは世間一般じゃない呼び名が多い。9寸名古屋帯で袋帯のように訪問着などに着用できそうな錦糸刺繍のある 帯を裏をつけて袋帯のような形状に仕立てたものを我が家では「袋名古屋」と呼んでいます。

 腹部を半分に折って縫い付けてしまうのではなく 裏があって結ぶときに折って結ぶので、6分位のちょっと広めに結ぶこと もでき、豪華な着付けにも向いています。

 畳むのも袋帯と同じなので楽です。 問題は、この「袋名古屋」というのが通じない呉服屋さんも多いのです。 なんと言ったら通じるのでしょうか?

ゆうきくん

 名古屋帯には二種類の仕立て方があります。図Aのように胴の部分を初めから二つに折って仕立てるもの。図Bのように折らずに開いたまま裏を付けて仕立てるものです。

 優妃さんはこのことを言っているのだと思います。 呉服用語、仕立て用語が曖昧なことはすでに再三申し上げている通りですが、これらの仕立て方も様々な呼び方で呼ばれています。

 ちなみに私の店ではAは「名古屋仕立」Bは「開き仕立」と呼んでいます。また、Aの形式で手先だけを閉じるのを「松葉仕立て」Bを「お染仕立て」と呼んでいる所もあると聞いたことがあります。

 名称の違いは地域によるものでもなく、もっと小さな単位で異なるようです。私の店でも新しい仕立て屋さんに「名古屋仕立」と頼んだらBの仕立をされたという失敗談があります。その仕立て屋さんではAの仕立てを「閉じ仕立」と称していました。それらの全国統一の名称と言うものは無いのかもしれません。

 名古屋帯と言うのは、もともと大正時代の服装改良運動の時に発案されたもので、「胴の部分を半幅にして、結びの部分を並幅に仕立てた帯」でAの仕立て方を指して言っていました。私の店で使っている「名古屋仕立て」というのはそう言う意味があります。しかし、現在名古屋帯という言葉は袋帯に対する言葉で、二重太鼓の袋帯に対して単太鼓の帯をさして言っています。

 AとBの仕立て方の名称は統一されていないので、名称が合意された間では通じるけれども、初めての人とは通じないことが出てきます。

 そこで、何と言い表したらよいのかというご質問だと思います。そう言う場合は、私は余り好きな表現ではないのですが、仕立ての形態をズバリ表わす「開き仕立て」「閉じ仕立て」とでも言ったらよいのではないかと思います。

 例えば、初めての仕立て屋さんとは次のような会話になるでしょう。
「この帯を開き仕立てでお願いします。」
「え、開き仕立てですか、初めて聞きますね。」
「全部開く仕立てですよ。」
「ああ、○○仕立てのことですね。」
というふうに。あるいは、
「閉じ仕立てでお願いします。」
「えっ、閉じ仕立て?胴の部分を閉じて仕立てる××仕立ての事ですね。」
と言う具合に仕立て方を間違えることはないでしょう。 仕立て用語の統一は中々難しいと思います。

 それから優妃さんが使っている、袋名古屋帯という言葉は余り適切ではないように思えます。

 袋帯と名古屋帯は明確な違いがあります。前述の如く袋帯は袋状で芯を入れて仕立て、長さは1丈8寸。名古屋帯は裏に芯を貼り、長さは9尺~9尺5寸。名古屋帯はどちらにしても「袋」にはなりませんので、「袋名古屋」というのは誤解を受けます。と言うのは、袋帯で長さが名古屋帯と同じで単太鼓で締める帯があります。「京袋帯」等とも呼んでいますが、この帯と間違われる可能性があるからです。私も初め「袋名古屋帯」と聞いた時、この京袋帯の事と思いました。

質問者

 早速にお返事ありがとうございます。

 私も初め「袋名古屋帯」と聞いた時、この京袋帯の事と思いました。

 この説明をつけていただいたおかげで、我が家でなぜそうよばれるかが判りました。

 母の手持ちの袋帯は全てこの「京袋帯」です。単太鼓にしか結べません。 母の結婚のときには着付けさんが「短い袋帯で着付けしづらい」と言ってたとか。 (結婚式は東京のホテルでした) 母方の祖母が関西出身でしたので、こういった帯を誂えたのでしょう。 そこから、
「袋名古屋と同じになるように仕立ててください」
というのが簡略化されてこう呼んでいたのかもしれません。 すでに母は勘違い状態です。
 
 ところで、私が例に出した名古屋帯は裏布をつけて袋帯と同様の形態にした上で袋帯のように芯を入れた形に見えます。見える部分は銀地ですが、見えない部分の表地は白で裏地もこの部分と同じ生地が使われています。

 袋帯ではない証拠に脇に縫い目があります。長さと柄で言えば単太鼓向き。 縮緬地の別の名古屋帯は確かに芯を「貼る」という仕立てで裏生地はずっと薄い生地。

 この縮緬の名古屋帯ならゆうき様の説明も納得できるのですが、上記の帯はいかにも「縫った袋帯」という感じのものです。 これはどういった帯なのでしょうか?

  仕立て以前に帯自身が何か違うのでしょうか? 一見正装度が高そうな雰囲気ですが、全通ではないし、単太鼓の柄配置で、太鼓以外の結び方ができないタイプなので、華やかな印象の割にはそう格の高くない帯なのだとは思うのですが。

ゆうきくん

 問題の帯は、見てみないとはっきりしたことはいえませんが、(見ても分からないかもしれませんが)昼夜帯と呼ばれるものだと思います。

 昼夜帯は二枚の生地を張りあわせた帯で、鯨帯、腹合せ帯、裏付き帯とも呼ばれています。作られ始めた江戸時代には黒のビロードと白繻子を合わせていたので、白と黒を昼と夜、鯨の背中と腹に例えてその名があります。

 戦前までは作られていましたが、名古屋帯の普及にともなって姿を消したそうです。今でも古いお客様の所で見かけることがあります。ただ、柄が太鼓柄と言うことですが、私が見たことのある昼夜帯は全通ばかりでしたので、太鼓柄の昼夜帯があるかどうかわかりません。いつ頃のものでしょうか、戦前のものでしたら昼夜帯かもしれません。

関連記事
参照:「きもの博物館 47. 袋帯」
参照:「きもの博物館 19. 九寸織名古屋帯」
参照:「きもの博物館 45. 八寸名古屋帯」
参照:「きもの講座 1. 帯の話 その一」

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