全日本きもの研究会 きものQ&A
509. 辻が花について
質問者
初めまして、ゆうきくん(笑)さん。 初投稿でいきなり質問しちゃいます。
実は私は30代半ばにかかろうとしています(独身)が、1年とちょっと位前に急に着物熱・・とでも申しましょうか・・・ すごく着物に興味が出てきて今少しずつ着物について勉強中デス。
本題に入りますが、実はその着物熱が上がりまくってた時に着物の事をまったく知らずに買ってしまった辻が花の訪問着・・・どんなモノかと申しますと、濃紺の縮緬地に下半身に(自分から見て)右上から斜めに色とりどりの辻が花が、バーっと・・ そして、金箔が所々にチラホラ入ってます(金彩辻が花というそうです)。上半身は左胸よりやや高い所にワンポイント輪の中に辻が花。左襟に繋がってない辻が花が、コレもワンポイントでチョンと。後は両方の袖に(右は外、左は内側)辻が花がそれぞれ一房?ずつ描かれているお着物デス。
これは、絵羽・・ではないですよね。 これを買ったお店のオバさまは、
「これは、親族の結婚式でもいけるのよ」
っておっしゃってたんですが、どう考えてもこの着物は、ド派手な付け下げではないかと思うのですが、ゆうきさんはどう思われます?(付け下げと訪問着の中間位・・・かなぁ・・?)
オーダーで作ったけど、サイズもあってない気が・・・ 一応コレに合わせた帯は一本あるのですが、白地に薄紫の暈しが入った大人しめの七宝繋がりの帯で、おめでたい柄ですが、今の私にはまだ早いコーディネートかな・・と。(田舎の祖母の黒留袖を彷彿とさせる・・でも祖母の黒留袖の方がスッキリとして見えマス・・老けて見えるとです・・)
そうすると、お蔵入りになる可能性が高く、もったいない気がするのです。 今私が持ってる帯は織が多く、持ち帯で色々コーディネートしてますが、イマイチ自身が持てません。(捻きん帯・黒地に金糸のちっちゃい珠が末広がり風に広がった帯・大鶏頭模様柿渋染め帯・ナンちゃって綴れ(軽めの模様)帯)どれもバランスがイマイチで・・ こういう柄付けの着物は、私的には付け下げレベルまで落として地元の着物関係のイベントや習い事のイベントパーティーに着て行けたらと思ってます。
私が、ドスこい体系なのもあるのかもしれませんが、プロの目からみて、こういう難しい着物には、何合わせたらいいか、アドバイスしてくださ~い(涙)・・
長文で、なかなか要点を上手くまとめられない文章になってしまって(汗)スイマセン。 よろしくお願いします。
質問者
補足です。
まず、下半身の辻が花は、着物の縫い目で模様が途切れていない続きの柄です。 上半身は柄が・・上手く説明できないのですけど、私が街や雑誌でよく見かける訪問着は、例えば衿と上前?(でイイのかな?)の間の縫い目の部分にも途切れていない柄が続いていると勝手な認識かもですが、留袖などや付け下げを見分ける一つのポイントにしています。
改めてその辻が花見ると、衿と左胸の辺りの辻が花はそれぞれワンポイント(飛び柄っぽい?)になっていて縫い目に柄が続いてないという事です。その辺から派手な付け下げなのかと思いました。
すいません。追加質問です。
あと私の無知も悪い事とは承知ですが、その辻が花は、今もある某大手着物チェーンのもので、ソコの店員さん(着物を着た年配の方)が、
「価格を抑えたいならミシン縫いも出来るのよ。今のミシンはハイテクだから手縫いとは何の遜色もないし、胴裏は見えないところだから、ポリエステルの胴裏なら安いし得よ。あと何とこの八掛けはこの着物に合わせて作ってある揃いの八掛けでこれは絹が入っているから風合いが違うのよ」←オバサン言っている事は間違えてナイかもですが、裏ポリ静電気走ります。(泣)
手持ちの他の着物(もちろん裏地も正絹)より着くずれやすい気がします。(私の着つけの問題もアルとは思いますが) 滑って着つけしヅラいです。
帯との合わせで悩んでいますが、着物自体の柄は気に入っているので出来れば着れる場所を幅広く持って色々な所に着て行きたいと思っています。
あと、作ってしまった後なので悔んでも仕方がないですが・・・ ミシン縫いだと例えば着物の縫い目が裂けてしまったりだとか、裏を変えたいと思った時とかに縫製がミシン縫いだとお直しに出しても高くつくし、嫌がられる事もあるし、ミシン目から裂けたりすると修復が難しかったりすると、インターネットの質問サイトなどに書き込みがしてありました。
↑上記の事は、可能性としてあるのでしょうか?
また、上記の可能性があるとして、その着物を長く着たいなら破れ等が無い今の内にお直ししてもらった方がいいのでしょうか?
またまたの長文、まとまりのない文章ですいません。 コストを抑えたと言ってもゥン十万のお着物です。 私には清水の舞台飛び降り覚悟で買った物でした。出来れば長く愛着もって着たいと思っています。
ゆうきさん、ヨロシクお願いします。
ゆうきくん
現物を見ていないので正確にはお応えできないかもしれません。
まず、辻が花についてですが、「辻が花」というのを柄の名前と思っていらっしゃるようですが、そうではありません。辻が花というのは染色法の名称です。詳しいことは「きもの博物館26 辻が花染」をご覧ください。
次に付下、訪問着について判定を求めておられるようですが、判定は難しいです。付下と訪問着の違いについては、「きもの春秋16 訪問着と付下げ」をご覧ください。
その着物は大手着物チェーンから購入されたと言うことですので、だいたい想像できますが、十日町の辻が花でしょう。「訪問着」として売っていると思います。それ以上のことは言えません。
その着物に合わせる帯ですが、これも見ないと分かりませんし、センスの問題もありますので具体的にはお応えできませんが、次のような事は言えます。
十日町で創られている辻が花は久保田一竹氏の作品の流れで創られています。一竹氏の辻が花は本来の辻が花とは異なる染色法で染められているのですが、一般によく知られていますので、またやり方によっては大量生産が可能ですのでいわば一竹風の辻が花になっています。
一竹氏はその着物に好んで佐波理綴をあわせていました。佐波理綴は西陣の池口が開発した帯で、非常に細い経糸に金属糸を多用したもので玉虫色に光るのが特徴です。
一竹氏も金通しの生地を好んで使っていました。金通しではない一越の生地も使っていました、「一竹辻が花には光る帯を」と考えていたようです。十日町の辻が花であればその系統の帯が合うかもしれません。
裏地と仕立てについて
今流通している裏地はとても多種多様にあります。純国産(繭、製糸、精錬、製織全てが日本製)の生地は高価で、2万円以上しますが、間もなく値段が三倍以上になります。糸が海外で国内製織のもので1万~1万5千円位です。海外品になると十分に使えるもので5千円位です。(品質を問わなければもつと安いものもあると思います。)
着物の価格がウン十万円との事ですが、そのような高価なきものに化繊・ポリエステル、または交織の胴裏を付ける事は当社では考えられません。また呉服屋がそのような胴裏を奨めることも全く理解できません。
私の店では最も安い正絹の胴裏は海外品で6千円です。あまりお薦めはしていないのですが、どうしても安いのが良いとおっしゃる方、または表地が安いものには使っています。
標準品は1万2千円ですので、その差額は6千円です。ウン十万の着物に数千円ケチって仕立てを進めるなど考えられません。例えていえば、ウン十万のダイヤモンドに、
「価格を下げる為に台座はプラスチックにしましょう」
と言っているようなものです。コメントする術もありません。
最近仕立ては中国仕立てが大変多くなっていると聞いています。私の店でも業者に進められたことがありますが一切使っていません。 その店員さんがおっしゃるように、ハイテクミシンなるものがあって巧く仕立てるということです。
仕立てについては、仕立てが分からない人(呉服屋も含めて)にとってはハイテク仕立てでも良いのでしょうが、仕立ての現場を良く知るものにとってはとても任せられるものではありません。
私の店では数人の専属の仕立仕をお願いしています。いずれも個人です。いわゆる仕立て屋は使っていません。 仕立ては非常に微妙な技術です。数値に表れないような微細な違いを針一本で制御してゆきます。仕立士には個性があります。袷の得意な人、コートが上手な人、単衣が苦手な人、その他いろいろな個性を加味しながら仕立物をお願いしてゆきます。
誰がその仕立物を一番良く仕立てられるかを判断して仕立てをさせています。 そして、もし万が一仕立てに不具合が生じた場合、誰の仕立てなのかが分からなければなりません。不具合でなくても、後々直し等を頼まれた場合、同じ手でするのが良いからです。
そういう理由で、中国仕立てやミシン仕立ては使っていません。 中国仕立てやミシン仕立ては安価というメリットはあります。おそらく1万円から1万5千円位でお客様に渡せるのでしょう。胴裏と同じくいくら安価だと言ってもウン十万円のきものに中国仕立てやミシン仕立てを奨める気にはなりません。
お客様から「1円でも安い方が良いから」と言われればそれらを使わなくてはならないでしょうが、本当に1円でも安くしようと思うのであれば表地の安いものを奨める方がよほど親切でしょう。
参考までに当社の訪問着袷の仕立て替えは次のようです。
解き洗張り(全て解いて洗い、筋を消す) 14,700円 (洗わなければ11,025円) 仕立代 34,650円
合 計 49,350円
仕立代は安いかもしれませんが解洗張りを加えるとどちらが高いか比べてみてください。
質問者
私の拙い文章並びに質問に丁寧に答えて頂き感謝します。本当にありがとうございます。
まず、辻が花は染め方の技法の事だったんですね。 着物博物館へ行き勉強させて頂きました(^^) (私が、店員さんに聞いたのは、辻に咲いていた花を何処かの・・忘れましたが・・将軍がとても好んでいて、それをモチーフ?にして作らせた説でした。) いずれの花も空想上の花の為季節は問わないとの説明でした。
訪問着と付け下げ:着物春秋を拝見させて頂きました。 ・・・上手く言えませんが、ひとり一人受け止め方が違う事を前提とするなら、(作り手さんたちも)どちらがどうとは一概には決められないですね。判断は難しいですね。
あと・・着物の裏地・縫製の方法 確かに、なるべくコストは抑えたい事は店員に言いましたが、ゆうきさんの様にちゃんと説明してもらえていたら、おそらく裏ポリ・ミシン仕立てはしなかったと思います。
これは、私が無知であった事と、店員さんの勢いに圧されて(買え。とか、恐喝のような言葉は一切使われてはいませんでしたが、ローンの組み方やどのローンなら払えそうかなどは非常に熱心に(しつこく?)話をしてきました。)根負けした事が今の後悔に繋がっていると思います。
でも・・・正直悔しいです。・・・ごめんなさい。
今なら私は絶対!手縫いにしてほしいし、ポリと正絹では、まず生地が違うから、おそらく洗い等に出した場合に合わない素材同士で大変な事になっちゃうのではナイかと思うのです。表が正絹なのに、裏がポリも私の中では今ではあり得ないです。
八掛けも、絹と何かの素材って・・(私はその種類しか紹介してもらってないです。) 私も意味がわかりません。 今のとこ、個人の呉服屋もココの大手もこのような対応か、イベントでは(個人・大手各1回ずつ行った事があります)囲み営業しかされてません。
着物の勉強しにおいでと言われましたが、着物ほとんど見られず・・・ 後でクーリングオフする事となります。
無料着つけ教室(そんな都合のイイものは無い)に一時期通っていましたが、やはり似たようなものでした。 着物嫌いになりそうでした。(泣) 良い呉服屋さんとは出会えていない為(怖くて気軽に入れない)今はネットでの着物の閲覧や勉強が主となってます。
そんな中で結城さんのHPを発見して、色々勉強させて頂きとてもありがたいです。 ゆっくりじっくり学んでいこうと思います。
質問者
あと、帯合わせの事も有難うございました。
金糸等がはいらない染め帯・織の帯は、この着物には私はピンと来なくて・・・ 佐波理帯は本当に玉虫色のひかりがある帯なんですね。 (ネット上ですけど見ました)
インパクトのある着物にはインパクトのある帯がバランスが良さそうですね。(一慨にはいえませんが) 着物の奥って深いですね。 私が実際に遭った着物を取り巻く人たち(ただ売るためでお客の顔が見えていなくて、また、話を聞いてなかろうかとコッチが思ってしまうような売り手さんなど) に、着物の良さや自分の着物に対する思いを潰されそうになってしまって、ホントに着物離れしそうになりましたが、 やはり自分は、まだまだ勉強不足でも着物が好きな事ははっきりしました。
これからも分らない事などが出て来るとは思いますが、その時はまたお世話になるかもです。 これからもこのコーナーでお勉強させて頂きます。
本当にありがとうございました。
参照: 「きもの春秋16 訪問着と付下げ」
参照: 「きもの博物館26 辻が花染」