全日本きもの研究会 きものQ&A
542. 袋帯の胴柄
質問者
突然の問い合わせで失礼します。インターネットであちらこちら探してみたのですが、ドンピシャの解説が無く、結城屋さんのQ&Aにたどり着きました。
私事ですが、結婚式の着付けを頼まれたのですが、通常に帯を巻くと、お腹にくる模様が下向き(逆さま)の鳳凰になりました。おめでたい場所ですのに、いくら吉祥文様とはいえ、逆さま向いてるのはどうか・・・と気になりました。
このような場合は、帯結びは逆巻きにすべきでしょうか?逆巻きの場合は違う柄になります。図案の問題と思うのですが、鳳凰柄を腹に出したい場合は、常に下向きになってしまいます。
着付けを行う場合、どのようにすべきでしょうか?アドバイスを頂けるとありがたいです。
ゆうきくん
「鳳凰が逆さま」というのが、どういう状態か分かりません。紋の配置が、通しなのか、胴は別織なのかも分かりません。
締めた状態と、帯全体の画像を送って頂けますか。
着付けに関しては、適切なアドバイスができるかどうか分かりませんが。
質問者
早々のお返事、ありがとうございます。
帯の写真を添付しました。お太鼓を作ると、鳳凰の頭は左向きですが、帯を半分に折って輪を下にして巻き付けると、鳳凰の頭は右下方を向いて逆立ちしているようになるというか、落ちていくように見えてしまうのです。説明が下手で、分かりづらいと思いますが、ご理解頂けますか?
結婚式なのに、お腹部分の柄の鳳凰が落下しているように見えるのはいかがなものかと気になり、質問させて頂きました。
六通の袋帯なので、逆巻きにしたら、鳳凰は出ないので、その方が良いのかどうか・・・。
アドバイスを頂けると助かります。よろしくお願いします。
ゆうきくん
呉服屋として、帯を扱う者としてお答えいたします。
全体に柄のある帯は「全通」あるいは「六通」と呼ばれています。柄は垂先から手に向かって上向きに織られるのが普通です。柄は紋紙(現代はコンピューター)によって織り出されますが、繰り返し柄で織られるのが普通です。この柄の長さを「紋丈」と言って、この「紋丈」が長いほど高価になります。(紋紙が多く必要になりますので)従って、通常太鼓の柄は正立しますが、胴の部分は横向きになります。
おっしゃるように、柄が横向きでは変ですので、胴の柄も成立する柄付けをしている帯もあります。こういった帯は、胴の部分は他とは違う紋紙を用いる事になります。従ってそう言う帯は、紋紙が倍以上必要になりますし、織っている時に紋紙の掛替えをしなくてはなりませんので、手間が掛かり非常に高価な帯になります。
持ってらっしゃる帯が「安っぽい」と言う意味ではなくて、「普通の帯」です。帯を胴に巻く時には、輪が下になりますから、そういう意味では、「致し方ない」としか申し上げようがありません。帯の欠陥ではありませんし、着付けの仕方で是正できるものでもないと思います。
ただ、「下向き(逆さま)の鳳凰」(180度回転)と書いておられますが、正確には「横向きの鳳凰」(90度回転)です。それをどのように捉えるかです。「落ちて来る鳳凰」なのか「舞い下る鳳凰なのか」
質問者
たびたび、早々のお返事に感謝いたします。
「舞い降りる鳳凰」という捉え方をすれば「あり」なのかもしれませんね。
お太鼓の模様の段階で左向きに飛んでいますので、90度回転したら、下方向きに飛んでしまいますね。本人に聞いて、「舞い降りる」という解釈で良ければ、通常に着付けをして、気になるようでしたら逆巻きで着付けることにします。
帯を扱っておられる結城屋さんが「致し方ない」「通常の帯」とおっしゃってくださったことで、気が楽になりました。ありがとうございました。何度もご丁寧にありがとうございました。
参照:「きもの春秋 7. 着付けと袋帯」
参照:「きもの博物館 47. 袋帯」
参照:「きもの講座 1. 帯の話 その一」