明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-64 「粋(いき)」について(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 私は、この二つの話を聞いて、「これこそ粋な旦那」と思った。

 幇間に眉毛を剃らせるのが粋ではない。幇間を川に飛び込ませるのが粋ではない。幇間に数カ月の生活費を払える財力を持っているのが粋ではない。「粋」は金持ちやお大尽のものではない。金持ちには金持ちの「粋」があり、庶民には庶民の「粋」がある。それでも上に挙げた二人の旦那の振舞は、「粋」とは何かを良く表していると思う。

「粋」な人は、普通の人は考えない様な振る舞いをする。そこから、
「あの人は粋だね。」
と言う言葉が出て来る。

 普通の人が考えない様な振る舞い、とは良くも悪くも様々あるけれども、決して人が嫌がるような、また特定の人を傷つけるような振舞ではない。二人の旦那は、
「片方の眉毛を剃ってこい。」
「お前、川に飛び込め。」
と、突拍子もない事を幇間に要求する。決して友人や部下にそのような要求はしないだろう。相手が幇間ならではの戯言である。

幇間にとっては堪ったものではないが、
「眉毛が生えるまで俺が面倒を見てやる。」
「あらかじめ風呂を沸かさせておいて、着替えも用意させている。」
と、旦那は全て責任を一身で受けている。

 幇間は確かにひどい目に遭ったのかもしれないが、客に喜んで貰うと言う幇間の役割を果たし、更に名を揚げたかもしれない。そして、自分が被った災難を旦那は払拭してくれる。

 どちらも金持ちならではの所業であるが、その「粋」の気持ちはどんな立場の人にも通じるだろう。

 私は、その旦那がどのような井出達だったのかに興味がある。さぞ、所謂「粋な格好」だっただろう。姿かたちが粋、と言われる人でも気持ちの「粋」でなければ本当の粋な人とは言えない。

 姿かたちばかりを「粋」に振舞うのではなく、気持ちが伴ってこそ「粋」の神髄と思う。

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