明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-64 「粋(いき)」について

ゆうきくんの言いたい放題

 呉服の商売をしていると「粋」と言う言葉を良く耳にする。
「粋な着物を着たいのですが。」
「もうちょっと粋な着物はありませんか。」
「その帯は粋過ぎて私には似合いません。」
など、お客様の口からも聞こえてくる。

また市井でも、
「あの人は粋だね。」
「あんな粋な格好で恥ずかしくないのかな。」
「あの人は、そう良い着物を着てはいないけれども、何となく粋な感じがするね。」
と言った具合で、「粋」と言う言葉はよく使われる。しかし、
「それでは「粋」とはどういう意味なのか。」
と自問自答しても答えは分からない。あてずっぽうに答えを探してみると、
「高価な着物を着ている人。」
おそらくそうではないだろう。いかにも「私は高価な着物を着ています。」と言った素振りの人を「粋」とは思わない。
「人が着ない様な着物を着ている人。」
これも違うだろう。変わった格好をしている人は「粋」なのか。
「皆が思いつかない様な着物をセンス良く着ている人。」
これは、いくらか「粋」に近づいてきたかもしれないが、必ずしもそうではないだろう。

「粋」と言う言葉をよく使っているが、実は「粋」とは何かはよく分かっていない。「粋」とは何かと考えていると、本屋で一冊の本を見つけた。九鬼周造と言う人が書いた『「いき」の構造』と言う本である。

 これを読めば「粋」が何たるかが分かるだろうと思ったが、全く分からない。九鬼周造と言う人は哲学者で、大正時代にフランスに渡り、ハイデッガー、ベルグソンに認められ、サルトルが九鬼の家庭教師だったと言うから、彼の書く文章は私にはお手上げである。それでも強いて分かった事があった。

「いき」は関東の言葉で、上方では「粋(すい)」と言う。この二つは異なるものである。「いきな人」と「粋人」は違うのである。

 更に、「粋(すい)」は中国からはいったもので、それが関東に伝わって「いき」となり深化し、江戸の文化となり日本文化として花開き、それが逆流して上方にも伝わったと言う。

 もう一つは「いき」「粋」の反対は何かである。それは「野暮」と「無粋」である。そう言われると「粋(いき)」とは何かが少し分かるような気がする。

「野暮でない人が粋(いき)な人」「無粋でない人が粋人」と言われれば、「その裏返しが粋(いき)」と言う事になり何となく少しは分かったような気になる。それでも、具体的に「粋とは何か」と問われてもピンとこない。

 それでは、実際に「粋な人」に出会えれば、その人のいでたち、立ち居振る舞いを見れば具体的に「粋とは何か」が分かりそうなものであるが、そう言った「粋な人」は周りにはいない。野暮や無粋はいても粋な人はそうそうお目に掛からない。

 実際に「粋な人」には出会えないけれども、以前「成る程これが粋な人か」と思わせる話を聞いたことがある。

                                        つづく

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