明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-78 呉服屋の居場所

ゆうきくんの言いたい放題

 最近、呉服屋の居場所が失われているように思う。

 居場所が失われている、と言うのは、唯売上が減っている、業界の規模が縮小しているという意味ではない。果たして、本来の呉服屋が本来為すべき場が失われているのではないかと言う思いである。。

 どんな商売でも、それを生業とする人達はその道に長けている。商品や技術や仕来りなど、その商売に関する事は消費者よりも遥かに詳しい。消費者が分からない事があれば相談に乗り最も適切な商品やサービスを提供する。それが商売人である。

 先日、魚屋さんに行った時、身欠きニシンが並んでいた。「身欠き」の本当の意味は知らないが、三種類の身欠きニシンが並んでいた。他に「生ニシン」「生干しニシン」があったが、三種類の身欠きニシンには「ソフト」「本乾」などと書いてあった。干し方の度合いによって三種類の身欠きニシンがあるらしい。

 そこで魚屋の主人に、「これどう違うの」と聞いてみた。すると即座に、
「焼いて食べるんだったらこれ。煮るのだったらこれ。そして本乾はそのまま食べられます。」
と答えてくれた。日頃ニシンを焼いて食べているけれども、生で食べられる身欠きニシンがあるとは知らなかった。それも干し方によって食べ方も違うとは思わなかった。

 さように魚屋さんであれば魚に関しては何でも消費者の問題に答えてくれる。他の商売でも同じである。肉屋さんは肉について、床屋さんは整髪について答えてくれる。消費者は彼らの経験と知識を頼って買い物をするのである。

 さて、呉服屋は・・。

 着物に関する知識や仕来り、仕立は相当に複雑である。複雑なだけに消費者は呉服屋にその知識や経験を頼ってくるはずである。それこそが商売人の居場所、呉服屋の居場所である。何十年と掛かって経験をし、また知識を蓄え、お客様の信頼を勝ち取ってきたはずである。しかし、最近その居場所がなくなっているのではないかと思えて来た。

 呉服業界が縮小し、着る機会も減り、益々消費者は着物から遠ざかっている。それこそ今まで呉服屋が培ってきた知識を消費者が着物を安心して着る為に役立てたいと思うのである。しかし、消費者から我々の知識が懐疑的に思われることが多くなってきた。

 例えば、着物のメンテナンスで初めてのお客様から丸洗いを頼まれることがある。承って一週間ほどして
「できましたか。」
という電話を頂戴する。
「はい、今やっておりますので少々お待ちください。できましたらお電話致します。」
とお応えするが、着物の丸洗いは早くても三週間程度かかる。丸洗いができて商品をお渡しする時に、「随分遅いですね。」と言った表情をされるお客様もいる。

 いわゆるクリーニング屋さんでは一週間くらいで仕上げているのかもしれない。しかし、クリーニングと和服のクリーニングでは全く異なる。洋服のクリーニングに出した着物のシミが取れないと持ってくるお客様もいるが、一度クリーニングに出した着物のシミはまず取れない。また価格も和服の丸洗いはクリーニングよりも高価である。
「呉服屋のクリーニングは高くて時間が掛かる」と思われているふしが感じられる。

つづく

着物のことならなんでもお問い合わせください。

line

TEL.023-623-0466

営業時間/10:00~19:00 定休日/第2、第4木曜日

メールでのお問い合わせはこちら