明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 ゆうきくんの言いたい放題

Ⅶ-70 下駄、草履の終焉(その3)

ゆうきくんの言いたい放題

 何故他の子供達は下駄を履かなかったのだろうか。

 新品の下駄は、初めは鼻緒で指で挟みづらい。下駄草履に慣れた大人であっても同じである。鼻緒は履いているうちにいくらか伸びて来る。最初から緩い鼻緒の下駄を履けば、鼻緒は伸びてしまって履けなくなってしまう。少々きつい鼻緒であれば、次第に足になじんでくるのである。

 子供の下駄も同じである。初めは少々きつめの鼻緒がちょうどよい。しかし、下駄を履いたことのない子供は最初嫌がるものである。それでも騙しすかしながら下駄を履かせれば子供とて下駄を履くことに違和感を感じなくなる。私たちの世代もそうだっただろう。

 最近の親の世代の人達も鼻緒を挟むのに慣れていない人が多いのだろう。下駄を履かせようとして子供が嫌がる姿を見て、可哀そうだからと下駄を履かせるのを諦めてしまうらしい。

 下駄を履いたことのない子供が成長し、年頃になってゆかたを着た時に下駄を履かずにサンダルや靴を履くのも道理である。

 足指で鼻緒を挟むことが人体の構造に合っていないのか。人体に無理を強いているのか。そんなことはない。我々の一世代前の人達は誰もが下駄、草履を履いていた。それで何の不都合もなかった。足指で鼻緒を挟むと脳を刺激して頭がよくなるとも言われている。鼻緒が人間の生理に逆らっているとは思えない。

 下駄、草履に慣れた人にとっては、窮屈な靴を履くよりも下駄、草履の方が遥かに楽である。サイズの合わない靴、幅の合わない靴は苦痛でしかない。女性のハイヒールは外反母趾という病気まで併発してしまう。下駄、草履は靴よりも人間の生理に合った履物なのである。

 思うに、日本人が下駄を履けなく(鼻緒を挟めなく)なったのは、ひとえに親が子供に下駄を履かせなくなったからではないだろうか。初めて下駄を履かせる時、あたかも子供に苦痛を無理強いしているような錯覚に陥りサンダルや下駄を履かせているからではないだろうか。

 私の孫が下駄を履く時、嫌がったのは、ほんの一瞬だった。今は普段履きで履いている。決して呉服屋の孫という特殊事情がそうさせている訳ではない。日本人誰でも(外国人でも同じかもしれないが)下駄を履かせれば、直ぐに履けるようになるのである。

 親が子供に適切に指導すれば過去の日本人が皆自然に下駄を履いていたのと同じように鼻緒になれるのである。親が子供に日本文化を正確に伝えようとしていないように見える。日本人自らが、長い間培ってきた文化をいとも簡単に放棄している様に思えてならない。

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