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全日本きもの研究会 きもの博物館

45. 八寸名古屋帯

きもの博物館

 帯の名称が複雑且つ曖昧なことは「九寸名古屋帯」で紹介した通りです。帯は形状や産地その他により呼び方が違ってくる。

 単太鼓で結ぶ名古屋帯には九寸と八寸がある。九寸と八寸というのは帯の幅を表わしている。

 仕立てあがった帯の幅は八寸である。袋帯でも名古屋帯でもこれは変わらない。九寸帯の九寸というのは仕立てる前の帯幅に由来している。九寸帯は幅が九寸あり、裏に芯を貼って両脇を五分ずつ折り込んで仕立てるので出来上がりは八寸になる。

  一方、八寸帯というのは織りあがった帯の幅が八寸である。仕立ては九寸と異なり帯芯を貼らずに垂をかがるだけなので帯幅は変わらない。

 もともと八寸名古屋帯の名称は九寸名古屋帯と区別するものだったので、袋名古屋帯(京袋帯)をも指し、袋名古屋帯に対して単の物は単袋、または単名古屋帯とも呼ばれていた。

 帯の名称は複雑な上に時代と伴に変化するので厄介だけれども、現在は八寸幅におられた単の帯を八寸名古屋帯と称するのが一般的である。  

 では八寸名古屋帯とはどんな帯を言うのか。博多献上帯を思い出してもらいたい。芯は使わずに仕立は垂れ裏を折ってかがるだけである。

  八寸名古屋帯は大正時代の服装の簡略化運動に伴い、帯芯がいらない、仕立てが簡単などの経済性も評価され、いろいろな素材の八寸帯が織られた。一時は九寸名古屋帯を凌ぐ程流行したが、綴の八寸を除いては重厚感に掛けるために普段着用として使われ、今は少なくなっている。

  八寸帯という名称は、その形状を現しているので様々な種類がある。袋帯にもおしゃれ帯から礼装用の佐賀錦まであるように織り方産地によって様々である。綴れの八寸という礼装用の帯もあるけれども、私は八寸名古屋帯と聞けば、まず連想するのは紬のすくい帯である。

  八寸のすくい帯は、太い紬糸を用いた手織の帯である。そのざっくりとした風合いは、ホームスパンのようにも見えるけれども、実に緻密に織られている。紋紙はなく経糸を透かして下絵をあて、それに合せて横糸を通して行く。機を織る人に聞けば、紬のすくい帯は最も織り甲斐があるという。

  博多献上帯は寸分違わずに独鈷柄を織らなくてはならない。綴れは余りにも緻密すぎる。紬のすくいは緻密でありながら織り手の主観が十分に入る余地があるということなのだろう。

 前述の如く、八寸帯は芯を用いないので手軽に締められるけれども、綴れ帯を除いてはおしゃれ帯が一般的になってしまったので、最近はあまり締められなくなってしまった。 需要がなくなれば供給が減ってしまうのは世の習いである。八寸名古屋帯はめっきり織られなくなってしまった。しかし、昔からきものを着ている人にとっては寂しく思われるらしい。

「こういう帯は最近少なくなってしまいましたよね。」
 たまたま入手した紬の八寸帯を見せると寂しそうに言う。
 やはり、きものは日常的な物であって欲しいと思う。

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