明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きもの春秋終論

まえがき

きもの春秋終論

 1992年より二十数年に亘って結城屋のWEBページ「全日本きもの研究会」を続けて参りました。この間、WEBの発達はすばらしいもので、HPの数、質共に飛躍的に進化し、ブログ、ツイート、フェイスブックなど次々に新しいメニューが登場し、生活も商売もWEBなしでは成り立たないような世の中になっています。

 そんな中にあって、「全日本きもの研究会」は技術的にも余り進化せずに主張したい内容を鈍重にUPしてきたように思えます。

 そもそも「全日本きもの研究会」を立ち上げた動機というのは、私自身が身を置いている呉服業界に多大な疑問を感じていたからに他なりません。

 全ての業界の裏を知っているわけではありませんが、「果たして呉服業界というのはこれでよいのだろうか」と言う素朴な疑問が「全日本もの研究会」立ち上げの動機となりました。商品としての呉服、着物が流通過程で設定される価格、またまた最終流通段階である小売において行われている所業と言うものが、私にとっては受け入れられるものではなかったからです。

 物を売る商売とは、時として換言すれば「金儲け」という非常に厳しい所業を強いられることもあることは承知しているつもりです。しかし、日本の伝統文化である呉服、着物を商うにあたっては決して超えては成らない一線があるように思えるのですが、私の定義するその一線をはるかに越えたことがなされているのが現在の呉服業界です。

 そういう訳で、消費者に着物の良さを伝え、一線の範囲内で判断してもらえるものと努力して参りましたが、この20年でどれだけ消費者を啓蒙できたかは疑問です。

 それは私の力不足、努力不足の一言でしかないのですが、私は夢を見ていたのかもしれません。「私の力で呉服業界を浄化できる。」のだと。

「全日本きもの研究会」に対する反応は多数寄せられました。それで私の意図が十分に伝わっているのだと過信していたかもしれません。

 また、業界で小売するものとして、内容もやや遠慮がちであったことも否めません。業界との軋轢を避けるためにオブラートに包んだような表現で訴えてきました。その結果、多くの読者に誤解を与えたかもしれません。

 旅から旅さんのページをお借りして立ち上げている質問コーナーでは、過去400あまりのご質問に答えてきました。一つ一つ真摯にお答えしてきたつもりですが、反応は様々でした。着物初心者の素朴な質問から、私ではお答えできないような学術的な質問までありましたが、中には着物の鑑定、また他社で購入しようとしている着物の相談まで、本来の趣旨とは異なった質問も寄せられるようになりました。

 メールによる質問も多数頂戴しましたが、中には名前も無いものや、質問事項だけ一行で寄せられるものなど、「全日本きもの研究会」は重宝な着物相談所、無料鑑定所とでも思われたのでしょうか。

 それでも熱心に私の話に耳を傾けてくれた方も多くいらっしゃいました。わざわざ遠方より足を運んでいただいた方もいらっしゃいます。私が京都に上洛した折にお会いして話をさせていただいたこともありました。着物の事をもっと知りたい、本当の着物を知りたいと言う方も多くいらっしゃいますし、そのような方と接した時、「まだまだ日本の着物は後世に伝わるだろう」という気持ちになってきます。

 いままでは大きな風呂敷を広げすぎたように思えます。今後、活動範囲を狭めてより深い活動を続けてゆきたいと思います。

 とりあえず質問コーナー「ゆうきくんの質問箱」は終了させていただきます。長い間ありがとうございました。

 質問コーナーは終わらせていただきますが、私は天岩戸に篭ってしまうわけではありません。お客様や真剣に着物に向き合っていらっしゃる方とは今後ともご相談に載り、また色々と教えていただきたいと思っております。

 今まで「きもの春秋」のシリーズも奥歯に衣を着せたような表現で書いておりましたが、

 私が業界に対して、また消費者に対して申しあげたいことを、このコーナーで「きもの春秋終論」として歯に衣着せぬ表現で連載して参ります。

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