明治00年創業 呉服と小物の店 特選呉服 結城屋

全日本きもの研究会 きもの春秋終論

Ⅳ きものを取り巻く問題

きもの春秋終論

 呉服業界は、ここ30年で業界規模(売上)が約十分の一に減ってしまった。2兆円と言われていたきもの市場が、今2千億円程度と言われている。業界の人間としては甚だ残念でもあるし不甲斐ないとも思える。

 何故ここまできもの業界がしぼんでしまったのかと言えば、様々な問題があるだろう。

 業界が生き抜く際の問題点はいくつもある。

 また、業界云々ではなくてきものその物、視点を換えれば着物を着る人の立場からの問題も数多くある。

 着物を着る人にとって見れば、きもの業界が萎んでしまおうとも、着物を着るのに不都合がなければ良いはずだ。三軒の呉服屋を掛け持ちしていたのが、一軒になろうとも、また出入りの呉服屋が一軒もなくなったとしても他の呉服屋で着物を買えばよいのだが、そういった問題とは別に、着物を着る事自体に様々な問題が出てきている。

 私は呉服屋として、業界の問題から着物そのものの問題、その他着物に係わる多くの問題に直面している。

 店の売上だけを考えている店にとっては、呉服の売上が減れば、宝石や毛皮、果ては健康器具や健康食品を売るといったことをして店を維持しているケースもある。また、呉服の商売が行き詰まり、商売をやめて他の生業に移る店もある。店が自分の土地であれば、店を閉めて不動産業に徹するなどである。

 きものをめぐる問題に面と向かわず、巧くかわしながら生き抜く術もまた賢い生き方である。しかし、次々に起こる着物を取り巻く問題を正面から捉えず、かわしてきてしまった故に今日の呉服業界の姿になってしまったように思える。

 斯く言う私も、着物の問題を解決する術などあろうはずもないが、少なくとも真正面からそれらの問題を考えたいと思っている。

 問題を解決するには、まずどんな問題があるのか、その問題は何故起こったのかを知らなければならない。呉服業界の問題を一つ一つ一緒に考え、何とか着物を守っていただきたいと思っている。

 次回から、思いついたきものの問題について述べようと思う。思いつき順なので、全体としては一貫性のないものになるかもしれないが御了承いただきたい。

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